2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の体操科における運動技術指導に関する歴史的研究
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20K19606
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
藤川 和俊 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 助教 (80803361)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 体操科 / 学校体育史 / 運動技術 / 授業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1920-40年頃における日本の体操科が、批判されていたにもかかわらず運動技術を追求していた要因を検討、考察することである。具体的には、理念や環境の差異に基づき複数の学校を抽出したうえで、各学校がどのような教材をどのように指導していたのかを明らかにすることを課題としている。 本年度は日本の公立図書館を中心に調査を行い、学校文書や地方教育雑誌記事の収集を行った。主な調査機関は愛知県図書館、岡崎市立中央図書館、北九州市立中央図書館、北九州市立文書館、徳島県立図書館などである。また、国内大学所蔵の史料についても収集し、対象とすべき学校を絞り込んだ。しかし、COVID-19の影響により各小学校に対する調査は見送り、次年度以降の課題とした。 上記の史料収集状況を踏まえ、今年度は千葉県市原市戸田尋常高等小学校と群馬県佐波郡赤堀尋常高等小学校の2校について個別に検討、考察し、その結果を8月に開催された体育・スポーツ史国際学会のコングレスと9月に開催された横浜スポーツ学術会議のコングレスでそれぞれ報告した。結果は以下のようである。第一に、戸田尋常高等小学校は一部の参観者から批判がでるほど高度な運動技術を指導していたが、その背景には不況の農村に暮らす児童の身体および精神的課題に応えようとする思いが存在していた。ここから、産業構造や経済状況が運動技術指導をめぐる問題に関係していたことが示唆された。第二に、赤堀尋常高等小学校は要目に記載されているほぼすべての教材を、示された学年通りに配当していた。しかしながら、児童に多くの教材を指導することは運動技術の習得を困難にし、興味を損なうことにつながると考えていた。つまり、少数の教材のみを指導し、児童の運動技能を高めるという指導には、限られた時間の中で児童に運動技術を習得させ、興味を喚起しようという現場の考えが反映されていた可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、先行研究や当時の教育雑誌等の検討を通して対象校を特定したうえで、各小学校における所蔵資料の確認を進める計画であったが、COVID-19の影響により実施を見送ったことが課題である。一方、国内の公立図書館および文書館に対する調査は順調に実施することができた。特に、鳥取県の遷喬尋常小学校や愛知県の岡崎尋常高等小学校、福岡県の天神尋常小学校、徳島県の富田尋常小学校といった、体操科に熱心に取り組んでいた学校に関する史料を多数収集できたことは大きな成果であり、研究の方向性を明確にすることができた。また、中間的な研究成果を体育・スポーツ史国際学会と横浜スポーツ学術会議において口頭報告できたことも成果としてあげられる。以上のように、課題は存在するものの、対象校の特定や各学校の個別具体的な検討、考察は進展しているため、研究の進展はおおむね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はないが、「現在までの達成度」に記したように、2020年度は小学校における所蔵資料の調査を見送ったため、2021年度はCOVID-19に関わる社会情勢を考慮しつつ可能な限り実施する。具体的には、まず、2020年度に公立図書館および文書館で史料を収集した遷喬尋常小学校、岡崎尋常高等小学校、富田尋常小学校における学校文書の所蔵状況を確認する。加えて、東京の浅草尋常小学校や福岡県の草野尋常高等小学校、香川県の香西尋常高等小学校についても史料収集を試みる。 また、これまでの史料収集状況に鑑み、2021年度は東京府青山師範学校附属小学校の体操科実践について検討、考察する。その際、1930年代から1940年代前半にかけて、教材配当に関する考え方および実践における教材配当がどのように変化したのかに注目する。なお、研究成果は6月に開催される体育史学会において報告する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の残金は\621,877であった。COVID-19の影響により国内外の学会がすべてオンライン開催となったことや史料収集のための調査が制限されたことが理由である。特に小学校に対する調査が今年度は困難であったため、実施を見送り、次年度への繰越金とした。次年度も史料収集に伴う旅費が大きな比重を占める。特に2020年度に見送った小学校の調査を精力的に行う。
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Research Products
(3 results)