2022 Fiscal Year Research-status Report
片側上肢の運動がもたらす反対側上肢への運動プライミング
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20K19620
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Research Institution | Morinomiya University of Medical Sciences |
Principal Investigator |
木内 隆裕 森ノ宮医療大学, 総合リハビリテーション学部, 准教授 (80711986)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 運動プライミング / 瞬発力 / RFD / PAPE / 至適回数 / 上肢 / 神経生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
片側上肢で瞬発力の必要な動作を練習すると、その動作に特異的な瞬発力が向上するだけでなく、反対側上肢での同じ動作の瞬発力も向上することが知られている。しかし、副次的効果として観察されていることが多く、臨床応用までの道筋は定まっていない。本研究では、最大瞬発力を発揮する課題(以下、バリスティック運動)を工夫し、片側上肢でのバリスティック運動がその後に行う反対側上肢の運動を促進する可能性及びそのメカニズムを検討する。
前年度に引き続き、2022年度中頃までは新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の流行と家庭の事情のため、研究の進捗が滞ったままであった。
当初計画の研究1は、運動プライミングとなりうる片側上肢バリスティック運動の至適回数について検討するものであった。アウトカムは、瞬発力の指標のひとつである rate of force development(以下、RFD)とし、運動後のパフォーマンス向上(post-activation performance enhancement;PAPE)を惹起する条件を検討した。その結果、バリスティック運動の6分後以降にRFDが向上する傾向が認められ、PAPEに関するレビュー(Blazevich et al., 2019)で例示されている変化とおおむね一致した。ただし、RFD測定自体による疲労及びプライミング効果の影響が懸念されたため、現在はそれについて情報を得るための実験を進めている。 当初計画の研究2は、驚愕応答刺激や精細度の高い経頭蓋直流電流刺激(以下、HD-tDCS)を用い、片側上肢バリスティック運動によるPAPEの神経相関を探索するものであった。アウトカムはRFDとし、HD-tDCSのみの即時効果を予備的に検討したが、これまでに設定した刺激パラメーターではRFDに関するPAPEは観察されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度から引き続くCOVID-19の流行と予期せぬ家庭の事情のため、十分なエフォートを研究に割り当てることができなかった。2022年度下半期に入ってからはそれらの影響が軽減されたが、進捗の遅れを挽回できず、大きく遅れたままの状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19について感染法上の位置づけが5類感染症へと変更されたことから、所属機関の方針に従いつつ、できるかぎり当初計画に追いつけるように積極的に実験と解析を進める。 研究遂行上の主な課題は、RFDの解析に時間を要していること、並びに、研究エフォートを増やしやすい時期にCOVID-19流行の影響を受けるリスクが残っていることである。前者に対しては、解析の一部を自動処理できるソフトウェアを利用することで対応する。後者に対しては、流行波データを参照しながら実験日程を調整し、これまでの感染症対策を部分的に維持しながら実験を行うことで対応する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最たる理由は、希望スペックの再検討を経て購入した経頭蓋電流刺激装置が当初計画よりも低価格であったことにある(昨年度の報告書のとおり)。その他、計画していた一連の実験が、被験者謝金を要さない予備実験にとどまったことが理由として挙げられる。 翌年度分として請求する助成金は、行動実験の被験者謝金に加えて、経頭蓋電流刺激装置に付属する消耗品や、驚愕応答効果の実験系に必要な物品の購入費に割り充てる。また、さらに余剰が生じた場合は、研究成果発表のための学会参加や論文投稿の費用として使用する。これらは当初計画に沿うものであり、妥当であると考える。
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