2020 Fiscal Year Research-status Report
歩行中の関節間シナジー発現に関わる身体構造とその機構の解明
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20K19628
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
垣内田 翔子 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 准教授 (90638537)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歩行 / 関節間シナジー / 成長 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは進化の長い時間をかけて現在の身体的特徴と歩行様式を獲得するに至っている.申請者らはシミュレーションによって筋や腱などの拘束を持たず,骨格条件のみをモデル化した受動歩行機において,遊脚中の足先が床に最も地面に近づく瞬間における複数の関節の相補的な運動(関節間シナジー)の発現を確認している.また,先行研究により,二関節筋の物理的構造条件によっては,膝を曲げた時股関節が踵に向かって真っ直ぐに降ろせるよう運動の方向を制約する機構を備えているが報告されている.これは,ヒトは歩行周期中のある特定の瞬間に関節間シナジーが強く働くような身体比率や,他にも二関節筋や腱のバネ要素などの力学的特性を備えている可能性を示すものである.本研究では,歩行中に周期的に生じる,関節間シナジーが強く働くタイミングと,成長や加齢により生活習慣の中で変化する身体の力学的構造の関係を明らかにすることを目指す.本年度の計画は,高齢者の姿勢変化として報告されている,背中や腰,膝の曲がり,がに股の姿勢を健常被験者が再現し,その姿勢での歩行中の関節軌道をUncontrolled Manifold (UCM) 解析することで,歩行一周期中,股関節に対する足先の高さや振り出し位置に注意を払うタイミングが姿勢の変化により変化するかを明らかにすること.及び,表面筋電位計により歩行中の脚運動に関わる主要12の筋活動の歩行中の発火タイミングについて調べる.これにより,UCM 解析によって分かる関節間シナジーが強く発現する時刻における筋活動の動向を比べる事で,関節間シナジーの発現とそのタイミング制御への中枢神経系の関与について考察を行う予定であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,健常被験者による歩行計測実験及び,複数年代の被験者にご協力いただく実験プラットフォームの構築を目指していた.現在は,健常被験者による通常歩行時の歩行軌道と,表面筋電位計による歩行中の脚運動に関わる主要12の筋活動の計測を数件行っている.関節間シナジーと筋活動の関係については解析を進められていないが,複数筋の組み合わせパターンの変化により歩行運動が構成されていることを確認した. 身体構造の違いによる関節間シナジーの発現タイミングの差異について検討を進めていく上でも複数年代の被験者から歩行運動の情報を得ることは重要なことである.しかし,コロナ禍の影響により多くの被験者に協力いただく計測実験が困難な状況が続いている.また,施設内設備を使用した実験計画にも制限がある.そこで,野外フィールドにおける歩行計測実験の実施を視野に実験フィールドの準備を始めた. また,次年度以降にどのような身体の力学的条件が関節間シナジーの発現するのか,その機構を明らかにするため,受動歩行機を用いた解析的研究を計画していたが,本年度は計画を前倒し,完全受動歩行機の製作を開始した.現在は全長800mm程度のサイズの腰・膝の2関節,中央脚及び外側脚2本の6リンク機構の受動歩行機を作成した.現在は,まだ安定した歩行に至っていないが,数歩の完全受動歩行を実現している.現在は安定した歩行に至っていないが,これにより実被験者での実験が困難な転倒時における脚軌道についても解析が進められると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在先行して始めている完全受動歩行機に筋や腱の条件を加えたモデルを作成し,どのような身体の力学的条件が関節間シナジーの発現するのを調べるための歩行モデルの作成を進める.成長期に上腿と下腿の長さの比や成長により筋張の変わる子供や,高齢者の歩行についての検討のため,被験者に協力いただく計測実験実施については,コロナ禍における歩行計測実験の実施に向けた対応を行う必要がある.現在は屋外対応などを検討しているが,これまでにトレッドミルを使用しない実験フィールドの作成には設備的課題があり,その対策実施を急ぐ必要がある.また,筋電計装着については課題が残る.そこで,次年度は先ず運動軌道からのアプローチを検討している.また,個別筋活動と関節間シナジーの関係について,現状の少数のデータによりアプローチを開始する.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,被験者を招いた計測実験の計画に変更が生じたためその対応を含め次年度以降の方が安全な実験実施が可能であると判断したため.
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