2020 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸結合タンパク質を起点とした形質細胞様樹状細胞と制御性T細胞連関の機能解明
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20K19632
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 周平 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90851345)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | pDC / Treg / FABP5 / Lipid metabolism / Tumor Immunology |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、FABP5を介した脂質恒常性が形質細胞様樹状細胞(pDC)の機能に影響を及ぼすことを明らかにしてきた。 制御性T細胞(Regulatory T cell; Treg)は過剰な免疫応答を抑制する役割を担い、自己免疫疾患や炎症性疾患、アレルギーなどの惹起を抑制する。一方で腫瘍免疫においては、腫瘍微小環境内で誘導されたTregが、他の免疫細胞の腫瘍への細胞傷害性を抑制することによって、腫瘍増殖の促進に寄与する。また近年の報告から、pDCが腫瘍免疫において重要な役割を担うことが示された。 そこで、申請者はFABP5欠損および野生型マウスに、マウス腫瘍細胞株であるB16F10メラノーマ細胞を背部に皮下注射する腫瘍モデルを実施した。その結果、野生型マウスと比較して、FABP5欠損マウスにおける腫瘍径が有意に抑制された。腫瘍径の結果と一致して、マウスの生存率もFABP5欠損マウスで改善されることが明らかになった。また、各マウスから採取した腫瘍組織を免疫組織化学的に評価したところ、FABP5欠損マウスから採取した主要組織において、細胞増殖マーカーであるKi67陽性細胞数や血管内皮マーカーであるCD31陽性細胞数が、有意に減少していた。次に、FABP5欠損マウスで認められる腫瘍の増殖抑制を担う細胞の同定のために、腫瘍組織から細胞を単離し、フローサイトメトリーにより評価した。その結果、野生型由来のものと比較して、FABP5欠損マウス由来の腫瘍組織では、CD8陽性T細胞の割合が増加した一方で、Tregの割合が減少していた。以前の研究から、FABP5欠損pDCはTregの誘導に必要なIDO1の発現が低下していることを明らかにしており、これらの結果はFABP5欠損pDCによるIDO1を介した末梢のTregの誘導が減弱していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、マウス尋常性乾癬モデルを用いる計画であったが、本計画のpDC-Treg連関の解析を行う上で支障が出たため、別の疾患である腫瘍モデルを用いることに変更した。しかしながら本年度の研究により、FABP5による脂質恒常性の制御を介したpDCによるTreg誘導の制御の潜在性を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
pDC-Treg連関へのFABP5の関与の可能性を明らかにした。そこで、野生型およびFABP5欠損マウスから単離したpDCと、コンジェニック野生型マウスから精製したナイーブCD4陽性T細胞を共培養して、Tregの誘導能を比較検討する。さらに、各マウス由来のpDCにより誘導されたTregの免疫抑制の評価などを行う。
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