2020 Fiscal Year Research-status Report
Nutritional prevention and treatment to protect oocytes from psychogenic stress
Project/Area Number |
20K19638
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
辻 愛 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (40826749)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 精神的ストレス / 卵子の老化 / 減数分裂異常 / D-アミノ酸 / 拘束ストレス / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
心因性(精神的)ストレスは卵子の老化(卵子の減数分裂異常や胚発生異常)を引き起こし、妊孕性の低下を招く。心因性ストレスによる卵子老化誘発モデルマウス作製方法の確立のため、浸水ストレス(WS)または拘束ストレス(RS)をマウスに負荷し、減数分裂異常卵子の割合を調べた。RS負荷マウスの減数分裂異常卵子の割合は、ストレスを負荷していないマウス(対照群)よりも約2倍高かった。一方、WS負荷マウスの減数分裂異常卵子の割合は増加しなかった。よって、心因性ストレスによる卵子の老化誘発モデルマウスには、WSよりもRSが適していることを明らかにした。 次に、心因性ストレスに対する卵子保護効果をもつ食成分の探索を行った。心因性ストレスは卵子や顆粒膜細胞の活性酸素を増加させ、アポトーシス(細胞死)を引き起こす。その結果、減数分裂異常が起こると考えられている。スクリーニングによりD-ロイシン(D-Leu)が活性酸素除去に重要な役割を持つSuperoxide dismutase(SOD)やHeme oxygenase-1(HO-1)の発現を誘導することを見出した。D-LeuはD-アミノ酸の1つである。D-アミノ酸は細菌による産生が報告されており、発酵食品に多く含まれる。RS負荷開始と同日に0.3%D-Leu食をマウス(RS/D-Leu群)に与え、卵子への保護効果を検討した。RS/D-Leu群の卵巣中Sod2およびHo-1の発現量はRS群より高く、ストレスによる減数分裂異常卵子の増加を抑制した。RSに起因する酸化ストレスが血中AST値を上昇させると報告されている。RS/D-Leu群はストレス負荷によるAST値上昇に対して抑制傾向を示した。これらの結果から、心因性ストレスに対するD-Leuの卵子保護効果が示唆された。また、これには、SOD2、HO-1発現誘導による抗酸化ストレスの関与が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々なストレスをマウスに負荷し、心因性ストレスによる卵子老化誘発モデルを作製した。さらに、ストレスから卵子を保護する可能性がある食成分をスクリーニングにより見つけ出し、動物実験で検証することができた。D-Leuはてんかんの治療に有効との報告があるが、それ以外の生理機能がわかっていない。本研究により、D-Leuの新たな生理機能を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
D-アミノ酸の中には、ステロイドホルモン合成を促進するものや脳機能に作用をするものも存在し、その生理機能は多種多様である。これらの背景を踏まえ、D-Leuとは別のD-アミノ酸について、心因性ストレスからの卵子保護効果を検討する。また、細胞を用いてSOD2、HO-1発現を誘導するD-アミノ酸をスクリーニングし、D-アミノ酸の新たな生理機能を明らかにしていく。
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