2020 Fiscal Year Research-status Report
過剰なタンパク質の蓄積・凝集による細胞老化誘導機構の解明と老化防止物質の探索
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20K19643
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高氏 裕貴 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 客員研究員 (30784144)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 老化 / プロテオスタシス / 凝集タンパク質 / タンパク質合成 / 機能性物質 / アーユルヴェーダ |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞老化は、動物組織を構成する体細胞が、不可逆的に増殖を停止する現象であり、個体老化や様々な疾患の発症に深く関わっている。本研究では、細胞老化の過程で過剰に蓄積したタンパク質が凝集していることを明らかにし、タンパク質の凝集が不可逆的な増殖停止を引き起こす可能性を検討する。 細胞老化における凝集タンパク質の時系列的変化を解析した。誘導老化と継代老化について経時的にタンパク質量、タンパク質合成量、タンパク質分解活性、界面活性剤不溶性・凝集タンパク質量を測定した。その結果、タンパク質量は細胞老化が進むにつれて増加した。タンパク質合成量は老化誘導初期から有意に増加したが、細胞老化が進むにつれて増加していたタンパク質合成量が無処理群と同等にまで減少した。一方、タンパク質分解活性は老化誘導による変化があまりなかった。界面活性剤不溶性・凝集タンパク質は老化誘導初期から蓄積が見られ、時間とともに増加した。またタンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドで処理するとタンパク質合成量、界面活性剤不溶性・凝集タンパク質量を減少させ、細胞老化を抑制できた。これらのことから、細胞老化の初期にタンパク質合成量が増加し、凝集タンパク質が徐々に蓄積することで細胞老化が誘導される可能性が示唆された。 アミロイドβ(Aβ)ペプチドやポリグルタミン(ポリQ)タンパク質といった凝集性タンパク質の抑制効果を示すアーユルヴェーダ植物について成分解析を進めた。HPLCで成分を分画し、線虫Caenorhabditis elegansを用いて解析を進めた結果、いくつかの分画液で効果が見られた。しかしながら、線虫で実験を進めるには高濃度の分画液が必要となるため、ヒト細胞での実験系の確立を試みた。ポリQ-YFPとAβペプチドを細胞に発現させ、細胞毒性が現れることを確認した。今後、この細胞実験系を用いて成分の分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、①細胞老化における凝集タンパク質の時系列的変化とその同定 ②過剰なタンパク質の蓄積・凝集を抑制する植物由来機能性成分の同定の2つを行うことを予定していた。①に関しては、細胞老化誘導時のタンパク質の合成・分解・蓄積を経時的に測定し、興味深い結果を得ることができた。凝集しているタンパク質の詳細については解析できていないが、今後解析を進める予定である。②に関しては、有効な分画液の候補を見つけることができた。新たな実験系の確立も進めることができ、成分の特定を急ぎたい。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞老化で凝集しているタンパク質の詳細を解析していきたい。また、老化誘導時にタンパク質合成が上昇するメカニズムやそれによって生じる小胞体ストレス、ミトコンドリア機能変化等を解析し、過剰なタンパク質合成による細胞老化誘導機構を明らかにする。 作製した細胞系を用いて、タンパク質の凝集を抑制する機能性成分を特定する。
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Causes of Carryover |
必要な物品等を購入し、研究を進めた。当初の予定使用額よりも少なくなったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費を含めて研究計画を遂行する。 また、コロナ禍により学会等への参加がなくなったことで旅費は発生しなかった。今年度以降は学会が開催されれば積極的に参加したいと考えている。
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Research Products
(4 results)