2020 Fiscal Year Research-status Report
Effects of exogenous pyruvate on glucose utilization and its mechanism in cultured hepatocytes
Project/Area Number |
20K19646
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
倉若 美咲樹 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 助教 (80851633)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ピルビン酸 / 培養肝細胞 / 糖質・脂質代謝 / ミトコンドリア / アナプレロシス |
Outline of Annual Research Achievements |
ピルビン酸(Pyr)は嫌気的解糖の終末産物であり、TCA回路、糖新生経路などの岐路に立つ中間代謝物である。ヒト血中にも存在し、近年では痩身用健康食品等の素材やミトコンドリア(Mit)病症状改善薬の候補とされているが、細胞外Pyrの作用と機構には不明点が多い。本研究では、細胞外Pyrの代謝調節因子としての役割と機構を、ヒト肝がん由来細胞HepG2を用いて追究する。今年度については、以下の結果を得た。 まずは、Pyr作用の時系列的解析を行った。Pyr添加後4、8、12、24時間時点の細胞と培養液を回収し、各種代謝産物の測定を行った結果、細胞内へのグルコースの取り込み量と細胞内中性脂肪蓄積量の増強は、いずれもPyr添加後8時間以降に観察された。これらの結果により、Pyrは添加後数分で効果を発揮するものではなく、添加後数時間を要する作用であることが推察された。 また、Pyrは細胞内の中性脂肪の蓄積を増強したが、細胞内に取り込んだグルコースを中性脂肪に変換するためには、Mit内のTCA回路を利用しなければならない。さらに、中性脂肪の合成が円滑に進むためには、解糖系生成物からTCA回路の中間体の補充(アナプレロシス)が必要となる。そこで、PyrのMit機能に対する影響とアナプレロシス反応に関与する酵素のタンパク質発現について検討した。これまでの成績からPyrはMit機能を亢進させていると推定されていたが、Mit機能の指標の一つである培養液中の酸素の消費量を測定した結果、Pyrによる影響は認められなかった。一方、アナプレロシスに関与する酵素のタンパク質発現はPyr 1 mM添加群で増強する傾向が観察された。以上の結果より、Pyrは培養肝細胞のグルコースの取り込みと中性脂肪の蓄積を促進したが、これらはTCA回路中間体を補充するアナプレロシスの促進と関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行により緊急事態宣言が発出され、大学構内への入構が禁止された期間があった。この期間中、細胞実験・生化学実験を行うことができなかったため、当初の計画よりもやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降についても、研究計画を大きく変えないで進める予定であるが、2020年度に実施予定だった検討事項は、早急に着手して遅れを取り戻す。具体的には、研究計画②「糖・脂質代謝関連酵素・輸送体の遺伝子・タンパク質発現と酵素活性の測定」で2020年度に実施予定であったDNAマイクロアレイ法による遺伝子の網羅的解析を行う。Pyr応答性が確認された糖・脂質代謝に関連する酵素・輸送体については、遺伝子発現をリアルタイムRT-PCR法により解析する。また、タンパク質発現はウエスタンブロット法で、酵素活性は蛍光基質を用いた高感度測定系等を用いて検討する。 さらに、研究計画③「ピルビン酸作用の基質特異性」の検討についても着手する。すなわち、Pyr以外の生体内に存在する有機酸の作用についての検討を進め、Pyrの基質特異性や生体内有機酸の新規機能性を見出す。具体的には、研究計画①で検討した方法を用いて細胞へのグルコースの取り込み、乳酸生成量、細胞内中性脂肪量、グリコーゲン量、ATP量などの代謝産物等の測定を進める。 2020年度に実施した研究計画①「ピルビン酸作用の時系列的解析」等で得られた結果をまとめ、学会発表や論文投稿によって公表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由について、新型コロナウイルス感染症の流行により当初の計画に遅れが生じ、2020年度に行う予定であった下記解析について、実施にまで至らなかったためである。 1. DNAマイクロアレイ解析。2.タンパク質発現・酵素活性の解析。 これらについては、2021年度に早急に着手し、研究費を使用していく。
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