2021 Fiscal Year Research-status Report
習慣的な有酸素性運動が動脈硬化の進行を抑制する機序の解明:ADMAに着目して
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20K19656
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
棚橋 嵩一郎 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (30861819)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非対称ジメチルアルギニン / ADMA / 有酸素性運動 / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
非対称性ジメチルアルギニン (ADMA; Asymmetric dimethylarginine) は、動脈に保護的に働く一酸化窒素 (NO) の産生を阻害する作用を有する物質である。ADMAの増加は、動脈におけるNO産生の減少につながり、動脈硬化を引き起こす要因となることが明らかになっており、動脈硬化性疾患の発症・進展過程における重要因子として近年注目されている。習慣的な有酸素性運動は動脈硬化の進行を抑制することが知られているが、本研究ではその機序としてADMAに着目し、習慣的な有酸素性運動によって動脈硬化の進行が抑制される機序にADMAが関与するか否か明らかにすることを目的としている。 本研究は、横断的研究を実施するとともに、前向き観察研究を実施し、習慣的な有酸素性運動が動脈硬化の進行を抑制する機序の一部にADMAが関与するか否かについて明らかにしていく予定である。本年度は、心疾患患者10名程度(維持期心臓リハビリテーション教室への長期参加患者を含む)にくわえ、前向き観察研究の3年目データにあたる一般中高齢者170名程度、慢性腎臓病患者30名程度の動脈硬化指標の測定および血中ADMA濃度の分析等を実施した。 これらのデータから、維持期心疾患患者では、長期間の運動実践によって血中ADMA濃度の増加が抑制される可能性があることを確認した。さらに、前向き観察研究では、一般中高齢者および腎臓病患者の血中ADMA濃度は、初年度と比較して3年目で有意に増加することを確認するとともに、高齢女性においてより高い身体機能(有酸素性運動能力)を持つ者は、加齢に伴う血中ADMA濃度の増加が抑制される可能性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、心疾患患者10名程度にくわえ、前向き観察研究の3年目調査にあたる一般中高齢者170名程度、慢性腎臓病患者30名程度の動脈硬化指標の測定および血中ADMA濃度の分析を実施した。これらのデータから解析も進めており、一定の進捗があったと考えられる。一方、COVID-19感染拡大防止対策から、心疾患患者では一部の対象者のみでしか測定を実施できず、前向き観察研究でも一部の対象の測定を延期した。これらのことから、やや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、得られたデータから、血中ADMA濃度と動脈硬化指標の関係性を明らかにする分析的観察研究を継続し、縦断的な検証も行う予定である。また、COVID-19の関係で延期していた対象者における評価も、状況を吟味しつつ進めていく。
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Causes of Carryover |
本年度は、COVID-19感染拡大防止対策から測定を一部実施できなかったため、次年度使用額が発生した。次年度に実施される測定および動脈硬化指標の分析などに使用する予定である。また、学会発表等に関する旅費を計上していたが、COVID-19の関係により使用しなかったことからも次年度使用額が発生した。次年度における学会発表等に関する旅費や論文投稿費用に充てる予定である。
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