2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢者に対する高強度短時間運動の効果検証-脳の機能的結合性とBDNFによる解明-
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20K19658
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Research Institution | Naragakuen University |
Principal Investigator |
中島 大貴 奈良学園大学, 保健医療学部, 助教 (00827280)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高強度インターバルトレーニング / 高齢者 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,①高齢者に対する1回の間欠的高強度運動(High-Intensity Interval Training;HIIT)介入が,認知課題パフォーマンスおよび脳血流動態に与える即時効果を明らかにすること,②高齢者に対する長期的なHIIT介入が,認知課題パフォーマンス,脳の機能的結合性,血清BDNFに与える影響を明らかにすることである. 今年度は,本研究目的を達成するために設定した研究課題のうち,「HIITが認知課題パフォーマンスと脳血流動態に与える即時効果の検討」を進めてきた.本研究でのHIITは,10秒間の休息と20秒間の高強度運動を1セットとし,8セット繰り返すプロトコルを採用した.運動強度は最大心拍数の80%とした.測定内容は,Control(休息),中強度の有酸素運動(Moderate-Intensity Continuous Training;MICT),HIIT前後のStroop課題の反応時間とエラー数,Stroop課題中の脳血流動態を機能的磁気共鳴画像法(fNIRS)を調査した. プレテストを実施した結果,Stroop課題のNeutral課題とIncongruent課題の間に反応時間の差があり,一般的にみられるストループ干渉は観察された.また,Stroop干渉に関連する課題の反応時間は,Controlと比較してMICTおよびHIIT後に短縮した.Incongruent課題のエラー数については,HIIT後に特徴的な変化はみられなかった.実行機能と関連する背外側前頭前野領域におけるIncongruent課題時のfNIRSの結果について,Oxy-Hbのピーク値はHIIT実施前が高い場合もあるが,課題実施中はHIIT実施後が高い値を示している.また,課題開始直後のOxy-Hbの増加を示す初期勾配は,HIIT前と比較してHIIT後に増加傾向にあった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度はデータ収集に向けた準備を進め,高齢者への研究説明も終了していた.詳細には,本研究で用いるStroop課題をSpstim2視覚提示ソフトを用いて作成し,ボタン入力することで回答を得られるようにした.また,運動を行う実験室の調整やfNIRSの設定を行い,プレテストまでを完了させた. しかし,本研究では高齢者を対象としており,COVID-19の感染リスクは高いことから,当初研究の協力に同意が得られていた対象者の同意取り消しが多数あった.また,研究実施施設でCOVID-19の感染者が出た場合には,研究実施施設への立ち入りが困難となったこともあった.これらCOVID-19の影響により,データ収集が非常に遅れていると判断している. 現在も地域包括支援センターへの協力依頼や近隣の高齢者の方への協力依頼は継続しており,一定数研究参加への同意は得られているものの,関西圏での感染拡大が終息せず,測定時期を遅らせて欲しいとの声が多数聞かれる.加えて,研究協力者のみならず,そのご家族の意向(研究協力者はデータ収集に参加可能と判断されたが,データ収集に参加することに対するご家族の同意が得られない等)もあることから,積極的なデータ収集には至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
現時点でデータ収集の準備は整っており,COVID-19およびワクチン接種の状況に応じて研究課題①「HIITが認知課題パフォーマンスと脳血流動態に与える即時効果の検討」を進めていく予定である.関西圏における緊急事態宣言や研究対象地域の緊急対処措置の状況を随時確認していく.また,研究協力者にも適宜確認を行っていく.COVID-19の状況にはよるものの,2021年度上半期でデータ収集を完了し,論文執筆および学会発表の準備を進めていきたいと考えている. 研究課題②「高齢者に対する長期的なHIIT介入が,認知課題パフォーマンス,脳の機能的結合性,血清BDNFに与える効果の検討」についは,磁気共鳴画像診断装置(Magnetic Resonance Imaging;MRI)を測定する際に,県外への移動が必要となるため,行政機関の方針に従い慎重に進めていく.当初は県外への移動方法を公共交通機関で検討していたが,バスを手配する等,不特定多数の人と接触することを避ける方法も検討している.研究課題②についても,2021年度上半期にはデータ収集を開始し,論文執筆および学会発表の準備を進めていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
人件費については,COVID-19の影響により,データ収集が困難であったことから,研究対象者への謝金の使用がなかった. その他に計上していた論文校正費についても,研究のデータ収集が進まず,論文執筆に至らなかったことから,論文校正費用の使用がなかった.
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