2021 Fiscal Year Research-status Report
外来がん化学療法患者に対するQOL向上を目指した栄養療法の確立に向けて
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20K19660
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
三宅 沙知 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (80633859)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 早期栄養介入 / 消化器がん / 乳がん / 化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がんに対する治療は著しく進歩しており、がん患者の生存率向上に寄与している。しかし、適切な治療が行われたとしても、治療開始時にはすでに多くの患者が栄養状態不良であることが知られている。さらに、外来がん化学療法患者は、原疾患、および治療法により症状も異なり、個々の管理栄養士の判断で行う介入では、がん患者に対する栄養ケアの質が保証されていない。我々はこれまでに、疾患部位に関係なく早期栄養介入が必要であることを報告してきた。 本研究の目的は、外来がん化学療法患者への効果的な栄養介入のプロトコールを作成し、適切な栄養介入の標準化および教育効果の持続を目指した栄養療法の確立を目指すことである。本研究では、がん患者向けの栄養アセスメントツール(Patient Generated Subjective Global Assessment:以下PG-SGA)を用いた栄養評価によって、栄養介入の必要性が高いと判定された消化器がんおよび乳がん患者に対して管理栄養士が栄養介入を行った。その結果、食事摂取量増加、体重減少抑制といった一定の効果が得られた。しかしながら、1度の栄養指導効果は化学療法の治療計画におけるクールを重ねるにつれて低下し、持続しないことが示唆された。また、初回外来化学療法時の乳がん患者において、PG-SGAと予後栄養指数であるPNI、Alb、CRPに関連がみられた。すなわち、より早期にあたる入院時(初回化学療法時)点における栄養介入の重要性が示唆された。加えて、化学療法を遂行するまでの期間(約1年間)に栄養介入を3回以上実施した群とそうでない群で比較したところ、より頻回に栄養介入した群でAlb、ChE、TCLが維持・改善傾向にあった。このことから、化学療法開始時(入院時)からの栄養管理の充実は、外来がん化学療法患者の栄養状態の維持・改善に有効である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
近年の知見および診療情報より外来がん化学療法患者に対する栄養指導の介入時期を明らかにするためのデータを得つつある。しかしながら、当初の計画では、令和4年度3月までに、外来がん化学療法患者における体組成の変化を含めたがんの疾患部位別の栄養状態の特徴を明らかにする予定であった。COVID-19感染拡大により、その都度計画内容と研究体制を調整せざるを得ず、倫理委員会申請までの作業に多大な時間を要したため、研究体制構築ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、これまでに治療を受けてきたがん患者に対する診療情報を振り返って調査および解析していく後方視的研究を実施する。がん患者のがん腫、有害事象、がんの疾患部位別の栄養状態、体組成の変化に関する特徴といった解析結果より明らかになった知見に基づき、各疾患状態に即した実践可能な栄養介入方法について模索する。さらに、データ収集ならびに分析の延長線上にある、外来がん化学療法患者にとって最適な栄養療法の確立を目指した予備的検討も同時に行う。研究を進めながら状況を見極め、仮に実験活動が制限されることになった場合は、論文執筆活動に努めたい。
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Causes of Carryover |
研究実施までのタイムスケジュールに遅れが生じ、本研究により得られた成果を論文投稿にまで到達するに至らなかった。未使用額は、本研究の目的をより精緻に達成するための調査費用の一部に充てる予定である。また、がん患者に対する栄養介入の効果を明確にし、論文化を行い査読付きJournalに投稿掲載するための費用とする。
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