2021 Fiscal Year Annual Research Report
ビタミンKによる腎脂肪毒性の改善作用と作用機構の解明
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20K19668
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
何 欣蓉 北海道大学, 保健科学研究院, 特任講師 (50815561)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ビタミンK / 腎臓近位尿細管細胞 / ミトコンドリア / 酸化ストレス / 脂肪毒性 / 抗酸化作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】糖尿病性腎症では腎臓の近位尿細管細胞に脂肪滴の蓄積が起こる。この脂肪滴の蓄積によりミトコンドリア障害を起こし、過剰な活性酸素種(ROS)が生じることが予想され、細胞死に至ると考えられる。ビタミンK(VK)による腎臓の脂肪蓄積とミトコンドリア障害の改善作用の解明のために、近位尿細管培養細胞への脂肪酸負荷による脂肪毒性への影響を検討し、VKの保護作用の機序解明を目的とする。本研究が解明された場合、VKによる脂肪酸代謝及び酸化ストレスの抑制が新たな腎疾患の治療戦略になると考える。 【方法】腎臓近位尿細管由来HK-2細胞に脂肪酸(パルミチン酸)を処理し、ROSを上昇させ細胞毒性を引き起こすモデル、脂肪滴の蓄積するモデルを確立する。その後、細胞の生存率やATPの測定、脂肪滴の染色を行い、VKの添加によるHK-2細胞への保護効果とその作用機序を解明する。また、非刺激HK-2細胞において、VKのミトコンドリア機能促進作用を調べるためにATP産生の測定および呼吸能の評価、ミトコンドリアDNA(mtDNA)コピー数の測定を行った。 【研究成果】HK-2細胞に脂肪酸負荷を添加し、脂肪滴の蓄積やATPの低下、さらに細胞死が観察された。これは脂肪酸代謝及びミトコンドリア代謝の異常が原因と考えられる。本研究では、VK添加(0.03μM-100μM)によって脂肪毒性から細胞を保護できた。一方、ミトコンドリア呼吸能の変化を測定した結果、非刺激HK-2細胞においても、VK添加でATP産生と最大呼吸が増加した。また、VK添加でmtDNAコピー数に変化は見られなかったことから、VKはミトコンドリアの数に影響は与えずにミトコンドリア機能を活性化させることが示唆された。本研究でVKが酸化ストレスや脂肪毒性から細胞を保護し、ATP産生を増加させたことから、糖尿病性腎症の予防に働くことが期待できると考える。
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