2020 Fiscal Year Research-status Report
口蓋形成初期におけるビオチンの機能解明と口蓋裂予防への応用
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20K19681
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
澤村 弘美 兵庫県立大学, 環境人間学部, 客員研究員 (30555371)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ビオチン / 口蓋裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、口蓋形成においてビオチンが妊娠中のどの時期に必要であるかを明らかにするために、ビオチンの供給期間を変えて胎児の口蓋形成に及ぼす影響を検討した。 実験動物には7週令のICR系雌性マウスを用い、同種雄性マウスと交配させ妊娠マウスを作製した。妊娠確認日を妊娠0日(胎齢0日)とし、欠乏群にはビオチン欠乏飼料を、コントロール群にはビオチン添加飼料を与えた。ビオチン欠乏飼料にビオチンを5mg/kg添加したものをビオチン添加飼料とした。さらに、妊娠10日までビオチン欠乏飼料を与えた後にビオチン添加飼料に切り替える群を添加群とし、それぞれビオチン供給期間を変えて妊娠15日まで飼育した。添加群は、dg10-12添加群、dg10-13添加群、dg10-14添加群とした。妊娠15日の胎児を摘出し、口蓋突起を採取した。 口蓋裂発生率は欠乏群で有意に高くなり、ビオチン欠乏により口蓋裂が生じた。一方、妊娠10日までビオチン欠乏飼料で飼育した後ビオチン添加飼料に切り替えた添加群においては、すべての添加群(dg10-12, dg10-13, dg10-14)で口蓋裂発生率が0%となった。口蓋突起中のビオチン量は、コントロール群と比較して欠乏群および添加群で有意に減少し、ビオチン添加飼料の供給期間が長いほどビオチン量が増加する傾向が見られた。欠乏群と添加群とのあいだで口蓋のビオチン量に差が見られなかったにもかかわらず、口蓋裂発生率に差が生じたことから、妊娠10日前後にビオチンが充足していることが重要であると確認された。ICRマウスでは、胎齢11日頃に口蓋突起が発生し、胎齢13日頃に左右の口蓋突起が舌の側面に沿って垂直方向に伸長することが報告されており、口蓋突起が発生してから垂直位をとるまでの段階においてビオチンが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、口蓋裂を予防するためには妊娠期のどの時期にビオチンが必要であるかを検討し、正常な口蓋形成のためには口蓋形成初期である妊娠10日~12日にビオチンが充足していることが重要であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
口蓋突起が発生する胎齢11日頃から垂直位をとる胎齢13日頃までの段階において、ビオチンが口蓋形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。今後は、胎齢12~13日の口蓋突起における変化を検討していく。具体的には、シグナル伝達やヒストン修飾への影響を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行の影響により学会がすべてオンライン開催となり、旅費が不要となった。また、卓上遠心分離機の当該年度中の納品が困難であったことから未使用額が生じた。 卓上遠心分離機は次年度に購入予定である。研究はおおむね順調に進んでおり、研究計画の変更もないことから、旅費の未使用額は当初の予定通りに研究を進めていくために使用する。
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