2020 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病の高リスク小児同定のための内臓脂肪計とコレステロール質的マーカーの開発
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20K19687
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
阿部 百合子 日本大学, 医学部, 准教授 (70750660)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内臓脂肪面積 / ウエスト周囲長 / メタボリックシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
小児メタボリックシンドローム(metabolic syndrome: MetS)は成人生活習慣病へ直結する。MetSの基本病態は過剰な内臓脂肪蓄積である。内臓脂肪評価の標準測定法は腹部CTだが、放射線被爆があるので小児では頻回には行えない。このため、簡易指標としてウエスト周囲長が用いられる。しかし、多くのMetS小児は内臓脂肪面積も皮下脂肪面積も共に大きい。このため、ウエスト周囲長は内臓脂肪面積のみを反映していない。 小児において、放射線被爆なしに内臓脂肪面積をより正確に測定できる簡便な方法が、強く求められていた。腹部生体電気インピーダンス法(BIA)は、成人では内臓脂肪面積を測定する機器として認められている。しかし、成人と小児では体組成が異なる為、これまで、小児ではBIAによる内臓脂肪面積の測定は困難であった。本研究は、MetS小児の内臓脂肪面積を、BIAを用いて放射線被爆なしにウエスト周囲長より正確に測定する事を目的とした。 さらにコレステロールサブクラス、アディポネクチン等の肥満関連因子と内臓脂肪面積の関係を検討する。これにより、動脈硬化リスクの高い脂質異常パターンを同定する事を目指す。また、これまでのMetS小児の食事療法は、成人の知見から導かれたものであった。本研究では、科学的に認められている簡易型自記式食事歴法質問票を用いた食事評価を行い、科学的根拠のある小児の栄養アセスメントを行う。これらを組み合わせて、生活習慣病リスクの高い小児を選び出し、医学的に適切な指導・治療を早期に行う方法を確立することを目指した。 対象は、医学的に腹部CTが必要であり同意を得た小児である。内臓脂肪計と腹部CT画像による内臓脂肪面積を算出し、双方の値の相関を検証した。さらに、身体計測、血液検査からコレステロールサブクラス、アディポネクチン等を測定した。また、質問表を用いた栄養アセスメントを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 腹部生体電気インピーダンス法(BIA)と腹部CTによって内臓脂肪面積を測定した46名の小児を検討した。 BIAによって測定された内臓脂肪面積(BIA)は、腹部CTによって測定された内臓脂肪面積(CT)と相関した(r = 0.865, p <0.001)。また、ウエスト周囲長は内臓脂肪面積(CT) (r = 0.829、p < 0.001))よりも皮下脂肪面積(CT)((r =0.928, p <0.001)とより相関した。 2. さらに、腹部CTから非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有無を診断した。NAFLD有り群は、NAFLD無し群と比較して、ウエスト周囲長、内臓脂肪面積(BIA)、内臓脂肪面積(CT)が有意に高かった(p < 0.001, < 0.001, 0.001)。 3. 19名の小児の検討では、LDLコレステロールは内臓脂肪面積(CT)と相関しなかった。Medium, Small, Very small LDLコレステロールは、内臓脂肪面積(CT)と相関した。 4. 38名の小児の検討では、レプチンは、内臓脂肪面積(CT)と正の相関を認めた(r = 0.462, p = 0.003)。アディポネクチンは、内臓脂肪面積(CT)と負の相関を認めた(r = -0.342, p = 0.033)。 5. 簡易型自記式食事歴法質問票を用いた栄養アセスメントを継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.医学的に腹部CTが必要であり同意を得た小児を対象に、引き続き、腹部生体電気インピーダンス法と腹部CTによる内臓脂肪面積の評価を継続する。 2.医学的に血液検査が必要であり同意を得た小児を対象に、引き続き、コレステロールサブクラスとアディポサイトカイン等の解析を行う。さらに、これらの結果と内臓脂肪面積との関連の検討を進める。 3.医学的に簡易型自記式食事歴法質問票を用いた食事評価が必要であり同意を得た小児を対象に、引き続き、栄養アセスメントを行う。さらに、栄養アセスメントの結果と内臓脂肪蓄積、血液検査結果との関連の検討を進める。 4.上記を組み合わせて、生活習慣病リスクの高い小児について検討を進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19の流行拡大のため、学会活動はオンラインで行い、旅費が生じなかった。 次年度は、COVID-19の流行状況、学会の開催状況などを考慮しながら、研究発表を行う計画である。 また、さらなるコレステロールサブクラス、アディポサイトカインの測定、簡易型自己式食事歴法質問票によるアセスメントに使用する計画である。
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