2020 Fiscal Year Research-status Report
りんごポリフェノールによるPGC-1α非依存的なミトコンドリア生合成経路の解明
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20K19688
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
吉田 裕輝 日本体育大学, 保健医療学部, 研究員 (10870248)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミトコンドリア量の増加 / ミトコンドリア機能の向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではりんご由来ポリフェノールの摂餌が筋持久力の向上するメカニズムを解明するため、ミトコンドリアに着目した。筋持久力向上にはアデノシン三リン酸(ATP)産生に必要なミトコンドリア量の増加や機能の向上が重要であると考え、その機能や生合成に関与する分子群を分析することを目的とした。りんご由来ポリフェノールが筋持久力向上を引き起こすメカニズムを解明することで、生活習慣病罹患のリスクを低減させる可能性や、怪我や疾病といった健康上の問題により十分に運動ができない人々への有用性を検討している。 本期間ではラットを対象とし、9週齢から10週齢にかけて1週間、事前飼育をすることで環境に馴化させた後、実験飼育を行った。個別換気ケージの中でラットを飼育し、12時間の明-暗サイクルとし、室温23 ± 1℃の環境により飼育した。実施権飼育を行うに際し,実験動物を、対照群、0.5%りんご由来ポリフェノール含有食摂餌群、5%りんご由来ポリフェノール含有食摂餌群の3群に分けた。群分けを行う際、群間のばらつきを防ぐために、各群の平均体重が同一になるようにランダムに振り分けた。飼育は、各群の食餌摂取量をあわせるPair-Feeding法を用いて4週間飼育を行った。4週間の飼育後の腓腹筋を用いてミトコンドリアに関与する因子を分析した。 これまでの研究から、りんご由来ポリフェノールの摂取は、ミトコンドリアの量や機能に対して有益である可能性が明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症感染による緊急事態宣言の発令等により、実験室への入室制限がなされ、実施権できない期間が続いたため遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
クエン酸合成酵素の活性はミトコンドリア量と相関関係にあることが知られており、クエン酸合成酵素の活性はりんご由来ポリフェノール含有食摂餌群で上昇することを確認した。すなわち、ミトコンドリア量が増加する結果を確認した。今後、ミトコンドリアを構成するタンパク質やミトコンドリアDNAに対する核DNA数の比率を分析することで、ミトコンドリア量が増加することを示すデータを集積していく。 ミトコンドリア生合成因子に関する実験では、特に5%りんごポリフェノール含有食摂餌群でトランスクリプションファクター(TF)EBの増加が認められた。近年TFEBはミトコンドリア生合成の調節に関与することが明らかとなりつつある。そして活性型TFEBは核内に移行し下流の標的遺伝子の発現を誘導していることが知られている。核内に局在するTFEBを分析したところ、核内での局在は増加していることが明らかとなった。今後はTFEBの下流に位置するタンパク質もしくは遺伝子発現の動向を分析していく。 さらに翌年には、TFEB遺伝子の作用を欠失した状況下で、りんごポリフェノールのミトコンドリア量や機能に対する影響を調べてく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受けて、実験室の立ち入りに制限があったため、実験を実施できる期間が短く予定したように実験を行うことができなかった。また、教育活動における学内の授業全体の組みなおしや感染対策防止策の考案、およびその実施に時間を費やすことが多かったことも理由として挙げられる。 2020年度実施予定でまだ未実施の実験に必要な消耗品(主に薬品類や抗体等)を購入し、なるべく前期中に実施し、本来の実施計画に追いつくようスピードを上げて研究を行っていく。
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