2020 Fiscal Year Research-status Report
肥満・糖尿病における腸管液性免疫機構の解明:腸管IgAの時空間的変化の解析
Project/Area Number |
20K19690
|
Research Institution | Health Science University |
Principal Investigator |
坂本 祐太 健康科学大学, 健康科学部, 助教 (90828617)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 肥満 / 糖尿病 / 生体内凍結技法 / IgA / 腸絨毛 / 免疫組織化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満や糖尿病は世界的に流行する栄養障害であり、それらが誘発する症状の一つとして、腸管免疫機能が低下することが知られるが、腸管液性免疫おける免疫細胞の分布などの形態的特徴は不明点が多い。腸管液性免疫を担う免疫グロブリンA(IgA)とIgA保有細胞に対する高脂肪摂食暴露の期間の影響を解析するために、当該年度は4週齢より通常食と高脂肪食を投与した12週齢および20週齢マウスを作製し、空腸絨毛内のIgA保有細胞の分布を検討した。生体機能や発症機序の解明に有用な形態学的アプローチでは、従来の固定方法(浸漬、還流固定、急速凍結)の問題点によって、正確にIgAの分布を観察することは困難であった。そこで、IgAなどの可溶性血清蛋白の正確な分布を観察できる生体内凍結技法を用いて試料を作製した。 その結果、通常食を投与した12週齢と20週齢の比較では、20週齢までに空腸絨毛内に分布するIgA保有細胞数を増加することを観察した。一方、高脂肪食を投与した12週齢と20週齢の比較では、12週齢から20週齢にかけて生じるIgA保有細胞の増加は抑制される所見を観察した。これらの所見は、空腸絨毛におけるIgA分泌能が低下していることを示唆した。さらに、IgAにクラススイッチするIgM保有細胞についても空腸絨毛に分布する細胞数は減少しており、高脂肪食投与が免疫細胞の分化過程に影響する可能性も示唆した。当該年度は、この結果を論文化することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた週齢をほぼ計画通りに進展しており、現段階までの知見を論文化することができている。具体的には、耐糖能異常が発生する12週齢と、罹病が進行している20週齢において免疫組織化学的解析で比較した。量的解析の手法、比較方法の検討も進んでおり、得られた知見を進展させるための実験に移行する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究も研究計画に沿って推進する予定であり、着目しているのは以下3点である。(1)回腸、盲腸、大腸等の腸管、あるいは腸管リンパ節や脾臓といった免疫細胞の分化に関する臓器への高脂肪食摂取による影響の検証、(2)肥満(炎症性サイトカインやマクロファージ)と糖尿病(高血糖)の因子がどのように腸管IgAに影響するかの検証、(3)12週齢および20週齢以外のマウスでの腸管IgA保持細胞の推移の検証である。次年度では実験計画に基づいて、16週齢マウスの解析と、他臓器における変化に着目して解析をする。また、次年度は当該年度に得られた形態学的な知見をさらに進展させるため、分子生物学的な解析手法を加えて用いることで、IgA分泌能の機能評価を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
当該年度についてはおおむね実験が順当に進んでおり、解析が進んでいる。そのため、計上していたよりも試薬、測定機器の購入費を抑制して解析に臨むことができた。差額については、当該年度の実験結果をさらに補強するため、蛋白の定量的解析を実施するための測定機器を購入する。
|