2020 Fiscal Year Research-status Report
末梢神経、骨格筋および毛細血管の縦断的同時多点解析による加齢に伴う退行様相の検証
Project/Area Number |
20K19694
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
崎田 正博 京都橘大学, 健康科学部, 教授 (10582190)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 末梢神経 / 骨格筋 / 毛細血管 / 加齢 / 変性 / 退行 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮・筋力低下が高齢者の転倒の主要危険因子であることは既に広く知られており、その予防・改善策として筋力強化に重点が置かれている。しかし近年、末梢神経退行が高齢者の転倒と関連があり、また末梢神経の退行が筋萎縮・筋力低下に先行するとの報告さえある。さらに近年、申請者は自然加齢過程でこの末梢神経退行が毛細血管退行の後に生じることを明らかにしている。しかし、毛細血管も含め末梢神経と骨格筋の縦断的同時多点解析による退行様相は未だ不明であるため、筋力強化の偏重策には疑問があり、早急に解明すべき課題である。 本研究は、ラットの長期飼育から骨格筋と末梢神経の前向き縦断的解析を実施し、毛細血管も含めて各組織の退行様相を組織形態学・生化学的に明らかにすることを目的としている。つまり、本研究の根本的な問いは「末梢神経とその毛細血管の退行は、骨格筋とその毛細血管の退行に先行するか」を検証することである。 2020年度の研究計画は、Wistar/STラットの長期飼育により若齢群(20週齢)、中齢群(50週齢)の2群から脛骨神経と骨格筋(ヒラメ筋と長趾伸筋)を採取し、組織形態学的解析を実施することである。具体的には、2群の脛骨神経有髄線維染色およびSDH染色(ミトコンドリア活性の確認)、ヒラメ筋と長趾伸筋の線維タイプ別染色およびSDH染色を実施した。また、2021年度に実施予定であった神経・骨格筋検体の毛細血管蛍光3次元像解析を2020年度末から実施可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
20週齢と50週齢の2群から採取した脛骨神経の有髄染色では、有髄線維の形態は維持されており、形態変化(変性)の徴候は確認されなかった。また、ヒラメ筋と長趾伸筋の各タイプ別線維の断面積はタイプⅡbおよびⅡxの低下が視認された。毛細血管の蛍光3次元像解析では、途中経過であるが脛骨神経内毛細血管径および分枝数の低下が50週齢で視認された。一方、ヒラメ筋および長趾伸筋の毛細血管径や分枝数に変化は視認されなかった。 以上から、身体不活動の状態が継続されている条件下において、20週齢から50週齢の縦断的経過で毛細血管の退行が既に始まっているが、有髄線維の変性には至っていないことが示唆される。また、骨格筋において、毛細血管は20週齢から50週齢の経過で退行は認めらえないが、速筋線維は軽度退行を生じ始めていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、さらにラットの長期飼育を継続し、縦断的に70週齢、90週齢および100週齢の3群から検体を採取する予定である。解析内容は、2020年度と同様に脛骨神経、ヒラメ筋および長趾伸筋の組織学的解析を主体として実施予定である。
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