2021 Fiscal Year Research-status Report
吟醸香とミネラルが生体膜ドメイン構造へ及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
20K19699
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Research Institution | Aomori Prefectural Industrial Technology Research Center |
Principal Investigator |
依田 毅 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 工業部門, 主任研究員 (50814563)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人工細胞膜小胞 / カプロン酸エチル / 酢酸イソアミル / カプロン酸 / イソアミルアルコール / イソバレルアルデヒド |
Outline of Annual Research Achievements |
カプロン酸エチル (EC) と酢酸イソアミル (IA) は、清酒の主要な吟醸香成分である。カプロン酸(CA)とイソアミルアルコール(IAA)はそれぞれECとIAの前駆体であり、酒造りにおいて重要な成分である。 EC、CA、IA またはIAA によって誘導される、不飽和リン脂質である1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)から作製された細胞サイズのリポソームの膜ダイナミクスを調べた。 膜ダイナミクスのパターンや発生頻度はこれら香り成分の種類によって影響を受けることがわかった。 これらの結果を踏まえ、飲料の品質評価の可能性について議論した。 また、イソバレルアルデヒド(IVA)もアルコール飲料の有名なフレーバーであり、一部の人々はそれを好む。そこで、ECとIVAを含む細胞サイズのリポソームの膜の相分離ドメイン構造について研究を行った。 DOPC /ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン/コレステロールまたはエルゴステロール三成分から作製された膜における固体秩序相/液体無秩序(Ld)相および液体秩序(Lo)相/ Ld相分離は、ECの添加後に減少し、IVAの添加後にLo / Ld相分離は添加後に減少することを発見した。 この結果は、ECおよびIVAの存在や含有量を評価するための分析化学的な応用面だけでなく、それら成分の物理化学的性質や生理的な機能を推測するための生物物理学や生理学的側面についても議論した。この研究の成果は、吟醸香や酒に含まれる香り・匂い成分の機能の理解を深めるだけでなく、成分の存在や含有濃度分析を迅速かつ高コストパフォーマンスに行う技術へつながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EC、CA、IA またはIAA によって誘導される、不飽和リン脂質である1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)から作製された細胞サイズのリポソームの膜ダイナミクスを明らかにすることが出来、査読を経て論文発表出来た。 また、吟醸香や酒に含まれる香り・匂い成分を含む細胞サイズリポソームのドメイン構造について明らかにすることが出来た。 これらの成果発表や実験が順調に進んでいることから、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
吟醸香成分であるカプロン酸エチルなどを含有する膜のドメイン構造やそれに対するミネラルの影響を顕微鏡観察を中心とした実験により明らかにする。 具体的には、ミネラル成分として生体内で重要なナトリウムやカリウム存在下での細胞サイズリポソームの相分離構造を蛍光観察等により明らかにしていくことを中心に研究を行う予定である。
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