ラベル化同位体を用いたトランス脂肪酸の体内動態視覚化技術の開発

2021 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 20K19704
• Research Institution: Fukushima University
• Principal Investigator: 吉永 和明 福島大学, 食農学類, 准教授 (40724802)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: トランス脂肪酸 / 安定同位体 / 体燃焼性 / エライジン酸 / バクセン酸 / オレイン酸

Outline of Annual Research Achievements

食品中のトランス脂肪酸は、過剰摂取により心疾患のリスクを高めることが疫学調査によって報告され、世界中で注目を集めている。しかしながら、食事によって摂取されたトランス脂肪酸の体内動態は明らかにされておらず、心疾患とトランス脂肪酸の直接的な関連性は不明である。さらに、食品に含まれる主要なトランス脂肪酸には、様々な異性体が存在するが、どのトランス脂肪酸異性体が心疾患に関与しているのかも特定されていない。そこで本研究では、心疾患とトランス脂肪酸の因果関係の解明に資する基礎的なデータを蓄積することを目的とし、食品中に多く含まれる炭素数18、二重結合数1のトランス脂肪酸（trans-C18:1）異性体の体燃焼性を精査した。最初に、13種類のtrans-C18:1異性体（trans-4～trans-16-C18:1）とオレイン酸（cis-9-C18:1，コントロール）の安定同位体ラベル化物を有機合成した。これをマウスに経口投与し、経時的に呼気ガスを採取した。そして、呼気ガスに含まれる二酸化炭素中の13C/12C比を測定することで、trans-C18:1異性体の体燃焼性の違いを評価した。その結果、投与初期において、trans-11-C18:1は、他の異性体よりも迅速に燃焼されることが確認された。また、trans型二重結合の位置により、脂肪酸の総燃焼量が異なる傾向が見られたが、有意差は認められなかった。さらに、すべてのtrans-C18:1異性体の総燃焼量は、cis-9-C18:1と比較して有意差は認められなかった。これより、trans型二重結合の位置は、その燃焼速度に影響を与えるが、総燃焼量には影響を与えないことが示唆された。