2020 Fiscal Year Research-status Report
肥満形成過程における褐色脂肪機能不全メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K19709
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
黒田 雅士 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任助教 (00803579)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 肥満 / メタボリックシンドローム / 褐色脂肪細胞 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満者ではエネルギー消費機能を有する褐色脂肪組織(BAT)の機能が低下することが知られ、肥満形成に関わる要因の一つとして認識される。詳細な遺伝子発現解析の結果、研究代表者らはインターフェロン応答に関与する転写因子Interferon Regulatory Factor 7(IRF7)を同定し、IRF7がBAT機能抑制に関わると想定し検討を行った。 1)熱産生機構に深く関与するUncoupling protein 1(UCP1)は野生型マウスでは高脂肪食を給餌することにより発現が抑制されるが、IRF7欠損マウスではその抑制が生じないこと、2)熱産生型培養脂肪細胞IRF7を人為的に過剰発現するとUCP1を含めた熱産生関連遺伝子の発現が低下することなどをこれまでに見出している。 そこで本年度はIRF7による熱産生抑制機構の分子メカニズムの解明を進めた。マウスUCP1プロモーター(-2905~+549bp)をpGL4.19ベクターへクローニングし、HEK293細胞を用いて既知の活性化因子peroxisome proliferator activated receptor γ coactivator-1(PGC1α)とIRF7を過剰発現させた際のプロモーター活性を評価した。PGC1αを単独で発現させた際にはUCP1プロモーター活性は顕著に増加する一方、IRF7と共発現させるとPGC1αの影響はほぼ完全に消失した。 以上の結果より、IRF7とPGC1αの何らかの相互作用が想定されたため、マウスIRF7の欠損変異体を作製し、PGC1α活性に対する影響を評価した。その結果、N末端の欠損変異体ではPGC1αの機能抑制作用が減弱することが明らかとなった。さらに今後は免疫沈降法やPGC1αの翻訳語修飾などの解析を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のように培養細胞を用いた検討では本研究における標的分子IRF7とPGC1αとの相互作用の可能性という全く新しい制御機構の可能性を見出すなど、大きな進展が見られた。さらに動物実験を進めていく過程でIRF7はエネルギー代謝のみならず、幅広い肥満病態の形成に関与している可能性が見出され、今後の研究の展開を広げる重要な所見が得られた。 一方、組織特異的IRF7欠損マウスのために取り組んでいるIRF7-Floxedマウスの作製はやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下の項目に取り組む。 1)組織特異的IRF7欠損マウスの作製:前述のようにFloxedマウス作製がやや遅れている。マウスの作製にはCRISPRによるゲノム編集技術を用いているが、今後は標的部位の再検討やガイドRNAの再設計等なども視野に引き続き取り組みたい。 2)IRF7欠損褐色脂肪細胞を用いた解析:生後3日齢IRF7欠損マウスより褐色脂肪前駆細胞を単離し、熱産生・ミトコンドリア・褐色脂肪細胞分化関連遺伝子の発現解析を実施する。また、通常培養状態やβ3アドレナリン受容体アゴニストを作用させた際の細胞を用いて、フラックスアナライザーを用いた酸素消費速度の測定、CE/GC-MSを用いた代謝動態の測定を行う。 3)IRF7による熱産生プログラム抑制の分子機序の解明:これまでの検討より、IRF7とPGC1αとの相互作用の可能性が見出された。HEK293細胞においてそれぞれのタンパク質を過剰発現させ、免疫沈降法等を用いて両分子結合の可能性を検証する。さらに、PGC1α波アセチル化、リン酸化などの翻訳語修飾を受けることにより細胞内局在やタンパク質の安定性等が規定される。同じく二つのタンパク質を過剰発現させた細胞を用いてIRF7のこれらPGC1αの翻訳後修飾に対する影響を評価する予定である。 4)I型インターフェロンのマウスへの投与実験:IRF7の活性化因子の一つとしてI型インターフェロンをマウスへ投与する。エネルギー代謝(酸素消費量)の測定、BATを含めた各代謝組織における熱産生・ミトコンドリア関連遺伝子の発現解析を実施する。
|
Research Products
(6 results)