2021 Fiscal Year Research-status Report
失禁予防の基盤となる骨盤周囲筋に特異的な筋再生制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K19711
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
吉岡 潔志 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(研究員・PDクラス) (10857262)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨盤底筋 / メンズヘルス / 筋再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、身体内の筋が身体部位単位で異なる発生をしていることに着目し、排泄コントロールに深く関与している骨盤底筋のもつ特徴を明らかにすることである。 これまでに、去勢術によるアンドロゲン低下モデルマウスを用いて、四肢筋の重量に影響が出ないごく短期間のうちに、骨盤底筋は劇的に萎縮することを確認した。これは成熟した骨格筋におけるアンドロゲン感受性の違いを示すものである。加えて、骨盤底筋由来サテライト細胞の異所移植の実験により、筋再生を担う筋組織幹細胞においても、骨盤底筋特異的なアンドロゲン感受性が四肢筋よりも高いことを明らかにした。このとき、骨盤底筋由来のサテライト細胞は移植先の後肢筋において、アンドロゲンレセプターの発現が高い筋を形成していた。 サテライト細胞の移植術は、前立腺がん摘出術等で損傷の可能性がある骨盤底筋における筋再生医療への応用が期待される。そこで、身体位置情報を司る遺伝子発現が移植先に引き継がれるのかを確認するため、発生時の前後軸形成に重要な役割をもつHox遺伝子発現が顕著に異なる後肢筋由来サテライト細胞を、頭部筋に移植した。すると、頭部筋では本来発現していないHox遺伝子を発現した筋が頭部で形成されることが明らかとなった。前立腺がん患者においてアンドロゲン除去療法が選択されるケースは多い。どの身体部位の特徴をもつ筋を形成するかという選択が、効果的な筋再生医療に重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前立腺がんの摘出術によって損傷リスクがある骨盤底筋は、アンドロゲン除去の影響を大きくうける。一方で、アンドロゲン除去療法は前立腺がんの治療に用いられる事が多く、スムーズな骨盤底筋再生の障壁となる可能性が示唆される結果が得られた。さらにこの問題が、サテライト細胞の異所移植によって、損傷筋再生の促進と、アンドロゲン低下による筋再生遅延の両方を解決可能であることを示唆する結果が得られたことから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
アンドロゲン除去によっておこる、骨盤底筋が示す劇的な萎縮のメカニズム解明に着手する。特に、飢餓や除神経で見られる筋萎縮との違いに着目し研究をすすめていく予定である。
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