2020 Fiscal Year Research-status Report
不規則な食事時間が生み出す膜タンパク質の発現リズム破綻と脂肪酸の異常蓄積
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20K19715
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
鶴留 優也 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 助教 (80846254)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 概日リズム / 細胞膜タンパク質 / 足場タンパク質 / 脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
時間制限給餌を行うことで不規則な食事のモデルマウスを作成した。不規則な食事を行ったマウスにおいては、正常食生活マウスよりも体重増加が観察された。ところが、摂取カロリーには大きな変化は認められず、食生活によって体重増加が引き起こされていることが示された。これは過去の疫学調査の結果と類似していることから、本モデルマウスが不規則な食生活における生活習慣病の発症リスクの関連性を評価するのに妥当なモデルと考えられる。 本モデルマウスの肝臓における時計遺伝子の発現周期を測定したところ、mRNA発現周期の反転が観察されたが、ほとんどの時計遺伝子の発現ベースが変化することはなく、摂食タイミングと同調していた。一方で、栄養素のトランスポーターを下支えする足場タンパク質MSPの発現に影響を与える時計遺伝子以外の転写因子についてその発現周期が減弱することを見出した。加えて、肝臓における脂質の蓄積が観察され、その蓄積量には日内変動は認められなかった。血漿中の脂質量には顕著な変化が認められなかったことから、肝臓選択的に起こる現象であることを明らかとした。 さらにMSPの発現を測定すると、mRNAの発現リズムが消失していることが明らかとなった。時計遺伝子の発現リズムはほとんど変化がなかったことから、この発現に影響を与える転写因子を探索した。肝臓で活性化している転写因子を明らかとするために転写因子活性化タンパク質を認識するプレートアッセイを行った。不規則な食事を継続したマウスでは肝臓中の脂質代謝関連因子の活性化が強く観察され、その下流にある脂肪酸の代謝や取り込みに影響がある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において、時間制限摂食を行うことで、不規則な食生活を模したモデルマウスの作成に成功した。さらに、本モデルマウスは過去の疫学調査であきらかとなっている「夜食を行うと肥満になりやすい」ことを模している結果となり、分子機構の解明に有用なモデルであることが示されている。モデルマウスの確立が計画以上の速度ですすんでいたため、分子機構の解明に関しても詳細に解析することができた。 さらに、本モデルマウスでは摂食パターンに同調する一方で、脂質の蓄積を生じるということも明らかとしている。興味深いことに時計遺伝子の破綻は観察されず、周期の反転のみであったことから、MSPの発現パターンに影響をあたえる転写因子には時計遺伝子以外の関与があることを見出すことができた。 現在検証中であるが、転写因子の活性化プレートアレイを行った際に活性化することが明らかとなった転写因子のいくつかは、MSPのプロモーター領域に結合することが明らかとなっている。これら転写因子と時計遺伝子がどのようにMSPに影響を与えるかを今後解析していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
事前の申請での検討項目として、高脂肪食の不規則給餌による足場タンパク質の発現リズム変容機構の解析を挙げていた。当初は時計遺伝子にのみ着目して検証を進めていく予定だったが、今後は時計遺伝子以外にも時計遺伝子と相互作用する転写因子に着目して検証を行っていきたい。具体的には、不規則食生活モデルマウスを対象に、異なる時刻(9:00, 13:00, 17:00, 21:00, 1:00, 5:00)に肝臓を採取し、各時計遺伝子やMSPの発現リズムを測定する。発現リズムが変容したMSPに着目し、このMSPによって下支えされるトランスポーターの発現やOleic acid, Palmitic acidやTriglycerideなどの脂質類の輸送活性の概日リズムが、不規則給餌群では破綻しているか否かを明らかにする。 また、高脂肪食+不規則給餌の解析も今後進めていく。高脂肪食+不規則給餌群本来休息すべき時間帯に高脂肪食を摂取するために、活動期では血中の多価不飽和脂肪酸濃度が低く、反対に休息期では飽和脂肪酸濃度が高いものと推測する。そこで、マウスの血液を用いたメタボローム解析を行い、高脂肪食+不規則給餌群で休息期に上昇する栄養素分子(脂肪酸やその代謝産物)を探索する。この栄養素分子をマウス肝臓初代培養細胞に添加して、時計遺伝子の転写活性異常やMSPの膜発現変化を検証する。さらに、この栄養成分を減量させた餌を用いて不規則摂食モデルマウスを作成し、不適切な食事による脂質代謝異常が緩和するか否かを明らかにする。これらの解析によって、高脂肪食の不規則給餌によるMSPの発現変動に関する責任分子の探索と、脂質異常症を緩和するための食事療法に関して検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染対策のため、当初予定していた動物実験を次年度に持ち越したため、動物の費用および飼育費用に関して金額にずれが生じた。予定していた動物実験は次年度6月より実施予定。
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Research Products
(2 results)