2022 Fiscal Year Research-status Report
皮膚バリア機能の維持・向上に対する遊離D-アミノ酸の役割
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20K19719
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
坂上 弘明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (80734855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / 皮膚バリア機能 / フィラグリン / ショットガンプロテオミクス / 表皮角化細胞 / 天然保湿因子 / アトピー性皮膚炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までHaCaTを用いて細胞分化の検討を行っていたが、薬液処置なしでも分化マーカーであるケラチン10が発現しており、ポジティブコントロールとなるLPAやラクトフェリンを加えても分化の促進は認められなかった。そこで本年度は、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)へ細胞種を変更して再検討した。NHEKに対して1mMカルシウムを添加すると、分化が促進されることが確認された。この細胞をショットガンプロテオミクスに供するため、ビーズ破砕によるタンパク質抽出を行ったが、分化細胞では細胞が凝集し、長時間ビーズ破砕に供しても細胞が溶解しなかった。そこで、細胞の可溶化条件を検討し、質量分析装置にそのまま注入可能なn-ドデシル-β-D-マルトシドや沈殿により除去可能な相間移動溶解剤を用いることで可溶化が進むことが分かった。 また、遊離D-アミノ酸を解析するため、二次元高速液体クロマトグラフィーシステムの構築を行った。1次元目分離においてアミノ酸を分離し、2次元目分離においてL体とD体を分離するが、最終的な検出器を質量分析とするために、移動相条件やカラムを検討した。 さらに、タンパク質の質的変化を調査するための技術開発を行った。リン酸化や酸化といった一般的な翻訳後修飾は質量変化を伴うため、質量分析により解析が可能である。一方で、アミノ酸の異性化は分子量変化を伴わないため、質量分析による網羅的な解析は難しかった。本年度は、タンパク質中のアスパラギン酸異性化を高感度かつ網羅的に解析する手法を合わせて開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞の処理条件、および発現タンパク質の解析手法についての検討が概ね終わった。また、遊離D-アミノ酸を分析するための二次元高速液体クロマトグラフィーシステムを構築し、質量分析装置で解析可能なアミノ酸分離条件を確立した。 また、タンパク質中のアスパラギン酸の網羅的解析手法についても確立できた。 来年度は最終年度であるが、薬液処置をした細胞をプロテオミクスに供し、解析することでD-アミノ酸の皮膚バリア機能への関与の有無が解析できるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
遊離D-アミノ酸分析技術の2次元目分離について検討し、分析技術を確立する。 また、皮膚バリア機能の維持・向上に対する遊離D-アミノ酸の役割を明らかにするため、これまでに開発した技術とノウハウを用いて細胞の解析を行う。
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Causes of Carryover |
年度末に購入しようとした精製タンパク質がバキュロウィルスにより発現されており、所内の組換えDNA実験計画書の申請を行っていなかったため購入することが出来なかった。これにより、残が生じた。
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