2023 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚バリア機能の維持・向上に対する遊離D-アミノ酸の役割
Project/Area Number |
20K19719
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
坂上 弘明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (80734855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / 表皮角化細胞 / 皮膚バリア機能 / フィラグリン |
Outline of Annual Research Achievements |
表皮は内側から基底層、有棘層、顆粒層、角層の4層構造になっており、外側に向かうにつれて細胞の分化度は高くなる。各層において発現しているタンパク質は異なっており、例えば増殖性の未分化細胞が存在する基底層では、ケラチン5やケラチン14が発現し、より分化の進んだ有棘層ではケラチン1やケラチン10へとタンパク発現が変化する。さらに分化の進んだ顆粒層においてはフィラグリンやブレオマイシン水解酵素が発現する。このように発現するタンパク質を解析することにより、細胞の分化度を計り知ることが可能である。そこで、ケラチンパターンであるケラチン1, 5, 10、フィラグリンおよびブレオマイシン水解酵素、コーニファイドエンベロープを構成するインボルクリン、ロリクリン、およびトランスグルタミナーゼ、角質間脂質を合成するセラミド合成酵素3の9個のマーカーについて、プライマーを合成し、LPAによって誘導させたヒト正常角化細胞 (NHEK)の分化状態を経時的(0, 3, 6, 12, 24 h)に解析した。未分化マーカーであるケラチン5はLPA処理前から発現しており、LPA処理後も発現量に大きな変化はなかったが、分化が進んだ細胞で発現するフィラグリンは24時間後で10倍程度に発現が上昇した。その他のマーカーについても特徴的な挙動を示すものが複数あり、複数のマーカーを組み合わせることにより分化の状態をある程度判別できる可能性が見いだされた。 皮膚常在菌の有するアラニンラセマーゼ、およびグルタミン酸ラセマーゼによって産生されるD-アラニンとD-グルタミン酸は皮膚表面に存在していると考えられるため、これらD-アミノ酸が細胞分化に与える影響を評価したところ、いずれのアミノ酸においてもフィラグリンの発現を促進させた。
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