2023 Fiscal Year Research-status Report
Effects of barefoot walking on postual sway and cardiac autonomic function
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20K19726
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
金子 潤 中京大学, 体育研究所, 特任研究員 (60720810)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 裸足 / はだし歩行 / はだしトレイル / 森林 / 環境教育 / 自然との共生 / 気候変動 / 適応策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、屋外を「はだし」で歩くことの効果とそのフィールドづくり(はだしのトレイル)について検証している。研究開始時から厳しい社会情勢の中で、当初の人間中心の研究目的から、自然と人間の共生を考える研究へと変化していった。 今年度は「はだし」での歩き心地に重点を置き、フィールドである森林内の土壌に樹木と共生する菌根菌による菌糸ネットワークを増やすことを目標としてフィールドづくりを進めた。 はだしのトレイルを作っている場所は1965年に地山を削ってできた造成地であり、硬く雨が浸透し難い粘土質の土壌であった。 硬く、ゴツゴツとした地面、雨が降るとぬかるんで滑りやすい斜面、こうした場所を「はだしで歩きたくなる」場所に変えるため、歩き心地、踏み心地の良い地面の状態について試行錯誤を繰り返した。今年度は菌類、植物、動物の共生をテーマにトレイル内の持続可能な土の循環について検証を行った。菌類の生育環境を整えるため、その棲家となる竹炭や近隣の森から錦糸が巻き付いた朽木をトレイル内に持ち込み50-80cmの縦穴に剪定した枝葉とともに入れ込んだ。その結果、昨年秋には菌根菌由来のツチカブリやドクベニタケが大量発生した。このような視点でのトレイルづくりは植物と共生関係にある菌類が増えることがわかり、人との関わりの中で森林内の生態系がポジティブな方向に変化したと考えられた。 森林内の環境変化とともに、一般に開放している「はだしのトレイル」の利用者は増加傾向にある。さらに今年度は、落ち葉や木の実など様々な森の素材をコンテナに入れて足裏の感触が楽しめる、出前型の「はだしトレイル」が都市部でも展開することができた。本研究は社会課題となっている環境問題に身近に触れ、環境教育的な意義も生まれつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
厳しい社会情勢の中で研究計画が変化し、森林内の生物多様性、持続可能性、といった環境教育的な意義についても触れながら研究を進めている。今年度ではだしのトレイルは概ね完成し、森林内の環境はポジティブな方向に変化しつつある。このような「はだしのトレイル」を体験できる簡易ツールが完成し、都市環境の中でも足裏から触れる体験が可能となった。ただ、「はだし」で歩くことでの人体の変化や、菌類を含む土壌微生物の環境の評価については今後の検討課題である。 次年度は加速度センサーを活用し、はだしで歩きたくなるフィールドの定義を明らかにし、研究をまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は4年目となったが、社会情勢もあり、人を対象としたデータを計測してそれをまとめるということは困難な状況であった。しかしながら、人間と森の両方の健康について考えを深める良い機会となった。今後は「はだし」で歩くことでの人体の変化を計測しつつ、菌類を含む土壌微生物の環境を見える化し、「はだし」で歩き心地の良い地面を客観的に評価できるか検討し、「はだしのトレイル」の定義を作り上げることを目指している。直感的な「はだし」で森を歩くことの良さだけでなく、できるだけ多くの人を森と繋げるために科学技術を用いた見える化・数値化を考えている。 最終年度は、はだしのトレイルの社会的意義について、森の生態系(エコシステム)、森里海の中での森林の役割、気候変動の適応策といった観点から再検討する予定である。
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Causes of Carryover |
厳しい社会情勢の中でも、社会課題を念頭におきながら、実施可能な手法で研究を展開してきた。今年度購入した加速度センサーの活用を進め、はだしのトレイルの歩き心地を検証する予定である。また、トレイルの土壌について分析することを予定している。研究テーマが学際的になり、文献資料が多数必要な状況が続いている。これらの費用についてこれまで繰り越してきた予算から使用する予定である。
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