2021 Fiscal Year Research-status Report
胎生初期低栄養ストレスと閉経後高度肥満ならびに非アルコール性脂肪性肝疾患の関連
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20K19727
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
木村 智子 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (00449852)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 低出生体重児 / メタボリックシンドローム / 骨・関節機能 / 筋機能 / 運動耐容能 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、胎生期の環境と出生後のミスマッチによる影響について、実戦動物であるWistarラットを用いて妊娠5.5~11.5日の母獣に給餌量を対照群の40%に制限した低栄養群と対照群の産仔で、骨・関節のモデリングならびにメタボリックシステムに関連する機能に違いがあるか検討を重ねてきた。骨・関節の機能については、モデリング機構やターンオーバーなどに関わるGrem1遺伝子の発現に変化が認められるとともに、表現型としても下腿骨の長さが短縮するという結果が得られた。また、metabolic syndrome(MS)に関わる因子としても、胎生期低栄養+閉経モデルにおいて、高度肥満ならびに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)発症のリスクが高まることが示唆される結果が得られた。 今年度は、これら動物実験に加えて20歳前後の青年期にある男女を対象とした疫学調査も実施した。本邦で低出生体重児(Low birth weight infant : LBWI)が急増し始めた2000年前後に生まれた男子大学生においては、MSと関連の深い筋機能のうちLBWIは運動耐容能が低下していることが明らかとなった。さらに、最大骨量に達する成人女性において、出生時体重と骨関節の発育やターンオーバーに関与する因子の関連を確認したところ、出生時体重は成人期の骨密度には影響を及ぼさないが、LBWIは下腿身長比の短縮という動物モデルと類似した表現型を来たし、骨モデリング機構に破綻をきたす可能性が示唆された。 今後、引き続き動物実験において中年期以降の「MS関連分子の動向」について解析を重ねるとともに、表現型の確認に基づいた再現実験などを水耕していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在、コロナ禍の影響ならびに研究代表者の体調不全もあり、思うように実験動物を用いた実験研究が進められず、進捗状況に遅れが生じている。動物実験に取り組むことが困難であった期間は、疫学調査を並行して進めてきたが、今年度は本研究における主要な課題である「胎生期低栄養ストレスに中年期以降の内分泌バランス異常が加えられること」による影響について、MS関連分子の動向に目を向けながら、当初の予定にあった遺伝子発現解析の準備ならびに表現型の確認に基づいた再現実験などを遂行していく。 これまでの進捗状況の遅れを取り戻すべく、新たな研究計画を立て予算内で有益な成果を生み出す努力をするとともに、今回得られた結果についても学会発表等を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
再現実験の精度をあげるべく、培養実験の条件を確立させた上で、糖負荷試験を行いながら胎生初期の低栄養ストレスとNAFLDとの関連性に耐糖能異常関与の有無があるのかを確認する。また、筋のエネルギー代謝についても確認する予定である。そして、脂質異常に陥る要因を探るべく、血液生化学的検査(血糖、血漿中性脂肪、遊離脂肪酸、インスリン、レプチン、IL-6、TNF-αなど)を実施していく。同時に、4群の術後24週に達したラットより摘出した白色脂肪細胞と肝臓組織について、肥満関連遺伝子であるUCP1~3、レプチン、Aldh1a1などの発現量を解析していくための交配と給餌管理を含む飼育を進める。
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Causes of Carryover |
現在、コロナ禍の影響ならびに研究代表者の体調不良もあり、動物実験について進捗状況の遅れが生じている。そのため、当初予定していた遺伝子発現解析の準備ならびに生化学的解析等を今年度実施することとなった。従って、今年度は論文投稿準備のみならず、今年度実施する予定である研究備品や消耗品購入の必要性がある。このような理由から、今回次年度請求額が生じることとなった。
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