2023 Fiscal Year Research-status Report
胎生初期低栄養ストレスと閉経後高度肥満ならびに非アルコール性脂肪性肝疾患の関連
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20K19727
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
木村 智子 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (00449852)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メタボリックシンドローム / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで胎生期低栄養ストレスが生後のミスマッチによるメタボリックシンドローム(MS)を発症させるのか、Wistarラットを用いた研究を行ってきた。そこで母獣が妊娠5.5~11.5日の間、給餌量を対照群の40%に制限した低栄養群と対照群の産仔にOVXを施した胎生期低栄養+閉経モデルにおいては、高度肥満ならびに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症リスクが高まることが示唆された。 昨年度は、胎生ごく初期の低栄養状態が閉経というトリガーを契機に高度肥満・NAFLDなどの発症リスクを高める背景を探索するなかで、閉経モデルにおいては摂餌量自体が増加したものの、低栄養モデル特有の者ではないことが明らかとなった。さらに、腸内細菌叢の影響を鑑み、ラットの糞食という性質を利用し低栄養群を対照群と同居させることで高度肥満・NAFLDなどの発症リスクを回避できるか検証を試みたところ、十分にレスキューすることができないばかりか、対照群の発症リスクが高まるという結果が得られた。 今年度は、低栄養群の腸内細菌叢の何が大きなトリガーとなっているのかを明らかにするとともに、「MS関連分子の動向」や「NAFLD関連分子の動向」を視野に入れつつ、肝臓組織内や脂肪組織、腸管など肝外臓器との相互作用が寄与するというmultiple parallel hit theoryメカニズムの解明を進めていく予定である。さらに、肝組織内のNAFLD関連遺伝子発現解析のみならず脂肪組織から分泌される炎症性サイトカイン・アディポカイン(TNF-α/IL-6/レプチン/アディポネクチンなど)ならびに、腸管から生じる分子(フルクトース/遊離脂肪酸/トランス脂肪酸など)や腸内細菌由来の分子(LPS/短鎖脂肪酸など)など糖脂質の肝毒性分子なども確認しながら、脂質代謝メカニズムに与える影響について検討を重ねていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度立案した新たな研究計画に従い、実験動物を用いた実験研究を進めている。また、生後の環境とのミスマッチという観点から、胎生期低栄養環境であった個体が成獣期に摂取する餌の種類や摂餌量などについても調査を重ねるため、餌の種類を変更することに伴い、卵巣摘出術の時期や材料採取時期なども変更しながら研究を進めている。さらに、内臓脂肪量や非侵襲的に脂肪肝の進行状況を把握すべく、MRI撮影やエコー撮影を併用しながら、経過観察しながら現状把握に努めている状況である。 現在、すべての個体について材料採取を終えた段階である。ここからは、得られた情報を基に解析を進めながら結果をまとめて学会発表等を行って行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
胎生期低栄養+閉経モデルにおいて、高度肥満に陥っていることを定量的に解析するために行ったMRI画像の解析により内臓脂肪量や皮下脂肪量を定量していく予定である。また、NAFLDに陥っているか否かについても、肝臓のエコー像ならびに肝組織切片をオイルレッドO染色した上で脂肪蓄積度を定量し、比較検討していく予定である。 肥満症患者と非肥満症者では、腸管内の代謝産物量や腸管ホルモン分泌の違いなどが認められており、腸内細菌叢の組成や機能に差異があるとされている。最近の報告では、NAFLD患者やOVXマウスでは、腸内細菌叢の組成が変化していることやOVXマウスでは、脂肪酸代謝に関連する脂質合成関連遺伝子PPAR-γや脂質摂取関連遺伝子VLDLRの発現が上昇し、PPAR-αの発現が低下するなど脂質代謝異常をきたしていることが報告されている。したがって、胎生初期低栄養のラットは、腸内細菌叢の変化を介して閉経後の高度肥満やNAFLDを生じる可能性が考えられる。 そこで今後は、胎生期低栄養に起因する閉経後肥満や糖・脂質代謝異常と腸内細菌の構成や機能との関連の要因を解明するために、対照群・低栄養群のみならず、同居群の閉経モデルラットにおけるおける腸内細菌叢の組成や機能について、網羅的な解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者の体調不良により、動物実験について進捗状況の遅れが生じている。また、当初予定していた遺伝子発現解析や生化学的解析、腸内細菌叢の解析等を行うことに加え、同居による糞食の影響により腸内細菌叢が変化するのかについても調査していくため、昨年度より新たに動物飼育から実施した。以上のことから、計画全体が若干延長せざるを得なくなったため、次年度も継続して研究を進めていく必要性が生じた。 従って、今年度は論文投稿準備のみならず、今年度実施する予定である研究備品や消耗品購入の必要性がある。このような理由から、今回次年度請求額が生じることとなった。
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