2021 Fiscal Year Research-status Report
脂肪細胞による内皮間葉転換誘導機構の解明と予防改善方法の確立
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20K19731
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
安澤 俊紀 畿央大学, 健康科学部, 助手 (80734425)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 内皮間葉転換 / エイコサペンタエン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、脂肪細胞と血管内皮細胞の関係を内皮間葉転換(Endothelial to Mesenchymal Transition; EndMT)に着目して検討した。さらにエイコサペンタエン酸(EPA)などの食品由来成分の抗EndMT効果を検討することで動脈硬化や組織線維化に関連する疾患の予防・改善を目指す。 昨年度までに確認された脂肪細胞肥大化が引き起こす血管内皮細胞のEndMTに対して脂肪細胞から分泌されるTGF-βの影響を検討した。脂肪細胞の肥大化とともに培養液中に分泌されるTGF-βは増加した。脂肪細胞培養液中にTGF-βの阻害剤を添加してEndMTの程度を評価が、TGF-β阻害剤による有意なEndMT抑制作用は認められなかった。そのため脂肪細胞培養液によるEndMT誘導作用はTGF-βのみによるものではなく脂肪細胞から分泌される他の物質あるいは複数の物質による作用であると考えられた。 また、脂肪細胞培養液の刺激による血管内皮細胞遊走能増加機序を検討するためプラスミノゲンアクチベータインヒビター-1(PAI-1)の発現を解析した。脂肪細胞培養液による刺激で血管内皮細胞のPAI-1の発現が有意に増加した。PAI-1は内皮細胞の接着因子を阻害することで内皮細胞の遊走能増加に関与していると報告されているため、脂肪細胞培養液によって内皮細胞のPAI-1発現が増加し細胞遊走能が増加したと考えられた。 次に糖尿病性腎臓病の予防・改善を目的に高脂肪食負荷糖尿病マウスの糸球体におけるEndMTに及ぼすEPAの影響を検討した。EPA投与によって高脂肪食負荷糖尿病マウスで増加したアルブミン尿は有意に低下した。高脂肪食負荷糖尿病マウスの腎糸球体内皮細胞でEndMTの進行が確認されたが、EPA投与によって抑制された。さらにEPAによってTGF-βやPKCβの低下作用や過酸化脂質の指標であるMDAの減少作用も認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪細胞肥大化がEndMTを引き起こすことを明らかにした。さらにEPAが、糸球体内皮細胞のEndMTを抑制することで腎機能悪化を防ぐ可能性を示した。一方で、脂肪細胞によるEndMT誘導機構はTGF-βのみによる作用ではなく複数の要因が関係していると考えられたため現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪細胞培養液中のEndMT誘導因子を解析するとともに、引き続きEPAの抗EndMT効果を検討する。当初の予定通り奈良県の特産品である柿の葉の後発酵茶エキスを用いて抗EndMT効果を検討している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、発注していた物品が年度内に納品が不可となり次年度使用額が生じた。 新年度より所属研究機関が変更となったため購入予定の物品を速やかに発注し計画的に予算を執行する。
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Research Products
(4 results)