2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of sarcopenia pathology focusing on skeletal muscle quality
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20K19737
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
大村 卓也 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40848420)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サルコペニア / フレイル / 高齢者糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルコペニアは2016年に国際疾病分類(ICD-10)に登録され、世界的に疾患として認識されつつある。個人の生活の質を悪化させるのみならず、社会的・経済的な損失にもつながることから、超高齢社会が到来した我が国において、サルコペニアの克服は老化研究の最重要課題となっており、そのためには有効な早期診断・予防・治療法の確立が必要になる。 加齢に伴って筋量は低下するが、筋量の減少に比して運動機能の低下の方が大きいことから、筋量のみではサルコペニアの発症機序を説明することはできない。サルコペニアの機構を解明するためには筋量や筋力の低下を来す前から筋の質的変化に注目した研究が必要である。 代謝変換(解糖系⇔酸化系)を伴う筋線維タイプの可塑性が骨格筋の質を規定するという概念に基づいて、サルコペニアの病態を解明し有効な予防・治療方法を開発する。これまで動的に変化する筋線維タイプ組成をリアルタイムに評価することの技術的制約から、筋線維タイプ可塑性や骨格筋の代謝変換に注目した先行研究はほとんど存在しなかった。蛍光タンパク質によって全ての筋線維タイプを生きたまま識別可能な MusColorマウスの新しい技術を用いて、① in vitro exerciseモデル、② in vivoサルコペニア評価方法、を確立する。 具体的には、老化に伴う歩行特性の変化と筋線維タイプ変化の関連を動物実験で明らかにする。細胞実験では筋線維タイプ変化を誘導する因子を同定し、それが細胞代謝に与える影響を解析する。筋の質的変化に基づくサルコペニアの病態解明と早期診断・予防法の開発につながる基盤的研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【サルコペニモデルの新しい評価方法の確立】サルコペニアや認知症の発症前・早期の介入前後の歩行特性変化がヒト疫学研究で注目されているころから、マウス歩行特性を質的かつ定量的に評価する新指標の開発を目指した。マウスの歩行特性をErasmusLadder及びCatWalk装置を用いて解析した結果、歩行速度の低下やステップの踏み外しの増加などの加齢性変化の定量化に成功した。一方、運動による歩行特性の変化は個体差が大きく、運動で変動するパラメーターの特定は限定的であった。 【In vitro endurance/resistance exerciseモデルの確立】C2C12細胞にelectrical pulse stimulation(以下、EPS)を加え、筋線維タイプ変換が生じるか検討した。高強度のEPSを長期間加えることで筋の形態変化が認められたことから、筋線維タイプ変換が生じている可能性があるが、高強度あるいは長期間のEPSでは、細胞が培養皿から剥がれるというジレンマがあった。そこで、肉眼的な筋収縮は伴わないが、Ca2+蛍光プルーブで筋へのCa2+流入が確認できる低強度のEPSで刺激したが、筋線維タイプ変換を誘導することは出来なかった。培養液中のグルコース濃度や培養皿のコーティングの条件を変えることで、長期培養が可能になる可能性があり、今後の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
【筋線維タイプ変換の可視化と代謝変換の評価】MyHC遺伝子に4つの異なる蛍光タンパク質遺伝子(YFP/Sirius/Cerulean/mCherry)をノックインしたMusColorマウス由来筋細胞を採取し、複数の生体内因子で筋線維タイプ変換が誘導されることを細胞が生きたまま観察することに成功した。次に、筋線維タイプ変化が生じた筋細胞において、代謝変換が生じているかをflux analyzer(XFp)を使いて測定した。その結果、速筋線維⇔遅筋線維と解糖系⇔ミトコンドリア系の対応関係は一対一の単純なものではないことが明らかになった。 【筋線タイプ変換を誘導する因子の探索】筋で生じた筋線維タイプ変換の生理的な意義を明らかにすることと併行して、筋力や筋機能の低下の原因となる筋の質的な変化を明らかにしたいと考えた。先行研究から着目したケモカインが加齢に伴いマウス血中濃度が上昇する傾向を確認した。そこでこのケモカインが筋線維タイプ変換を誘導するか確認した結果、変換は認められなかった。その他のケモカインに着目し、引き続き解析中である。 【加齢に伴う筋血流の評価】筋力や筋機能の低下にいたるメカニズムを統合的に理解するためには、筋の質の変化に加えて、血流や神経支配の加齢性変化も検討する必要があると考えた。そこで加齢に伴う毛細血管の数の変化を組織学的に評価したが、血管数自体の変化は認められなかった。ドップラーエコーによる血流の評価などを検討していく。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた試薬等の納品が大幅に遅れることが予想されたため、会計年度をまたぐ可能性があり、次年度使用とした。
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