2020 Fiscal Year Research-status Report
多変量/高次元の潜在変数をもつ時系列モデルの効率的ベイズ推測
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20K19751
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒瀬 雄大 筑波大学, システム情報系, 助教 (20713910)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ベイズ統計学 / 状態空間モデル / 時系列解析 / ボラティリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
経済/金融データ分析でよく用いられる非線形状態空間モデルのクラスを多変量/高次元データを扱いやすい形で拡張した。 日次など離散時間観測される金融資産収益率データについて、特に関心を持たれるのはその分散項(ボラティリティ)の挙動である。分散項はそれ自体がリスク管理上の指標となるなど、理論にとどまらず実務でも重視されることが理由として挙げられる。その動態を表現するために、確率的ボラティリティモデルがしばしば用いられる。これは一種の非線形状態空間モデルであるが、時点ごとに観測されない分散項を潜在変数として持つため、高次元系列を同時にモデリングしても潜在変数が多く統計的推測には限界があることがわかっている。 そこで、日次資産収益率データに加え資産の日内価格レンジを用いる、拡張された一次元確率的ボラティリティモデルを考える。観測変数の分布として確率過程の理論と整合的なものを導入し、厳密な統計モデルを構成した。また、この複雑な分布形を含むモデルのパラメーターについて、厳密なベイズ推定法を構成した。モデリングと推定のどちらにも厳密さが損なわれていないのが特長である。シミュレーションによる数値実験のみならず、株価データについての実証分析も行った。この研究成果は統計関連学会連合大会で報告しており、論文誌への投稿準備をしている。確率的ボラティリティモデルの拡張の方法によっては多系列のデータ取得に制限が出ることがあるが、日次資産収益率と資産の日内価格レンジのデータは多系列の場合でも取得が比較的容易であるため、多次元/高次元系列を同時に扱った実証も考えやすいものであると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経済/金融データ分析でよく用いられる非線形状態空間モデルのクラスを多変量/高次元データを扱いやすい形で拡張・開発するという目標は達成できている。一方で、現実の金融資産データのバイアス除去といった先行研究で指摘される問題の十全な解決と、早期の論文投稿が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に研究した一変量モデルをもとに、日次など離散時間観測される金融資産収益率データを対象にした多変量/高次元モデルを検討する。このときモデルに組み込むべき潜在変数やパラメーターの加速度的な増加だけでなく、分布の形状などが原因で、最尤法による推定は難しくなる。そこでベイジアン・アプローチを採用しマルコフ連鎖モンテカルロ法などを用いてシミュレーションによりモデルのパラメーターを推定する。また、より広いクラスの多変量/高次元状態空間モデルのパラメーターのベイズ推定については、理論的には必ずしも明らかではないことも多いため、その性質を明らかにすることも目標とする。引き続き学会や研究集会での情報収集や成果発表、論文誌への投稿を計画している。
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果は予定と同等以上のものであるが、未解決の問題もあり論文誌への投稿が遅れている。そのため、論文投稿にあたっての校正費用などを支出していない。支出は次年度に行う予定である。
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