2020 Fiscal Year Research-status Report
5G網におけるリンク顕著性に着目したネットワークスライス共生環境構築手法の研究
Project/Area Number |
20K19796
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
平山 孝弘 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワーク基盤研究室, 研究員 (70745687)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ネットワーク仮想化技術 / ネットワークスライシング / 複雑系ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、第5世代移動通信システム(5G)において、超高速通信、超大量端末通信、超高信頼低遅延通信をはじめとする、様々なサービスに特化した無数の仮想ネットワーク(スライス)が同一通信基盤上で混在する環境において、それらのスライスをうまく共生させるための複数スライス設計・再構築手法について検討を進めている。令和2年度は、特に2つのスライスが共生する環境において、それらのスライスが段階的に規模拡張(ノードの追加およびスライスの再構成)を続けるシナリオにおけるスライス再構成手法の検討、および性能評価を行い、国内研究会(電子情報通信学会情報ネットワーク研究会)にて発表を行った。
本研究計画では、初年度(令和2年度)の目標として、2つのスライスが共生する場合のスライス設計手法の検討をすることと掲げた。先行研究では、リンクの顕著性に着目し、顕著性の高いノードへサービスを提供する仮想マシンを配置するようにスライスを設計することで、最適化手法より少ない計算量で、仮想マシンのマイグレーションコストを抑制しつつ、ネットワーク性能(遅延など)を大きく毀損しない単一スライス設計手法を確立した。今年度は、先行研究の適用範囲を2つのスライスの共生へと拡張し、一方のスライスへサービスを提供するノードは、もう一方のスライスには利用されないように、競合を避けてスライスを設計する手法を提案した。この手法により、2つのスライスが交互に規模拡張/再構成を繰り返す状況下で、スライス再構成に要するコストを最適化手法の3分の1程度に抑えるにも関わらず、平均遅延の劣化は20%程度に抑制できることを確認した。
本研究では、顕著性という複雑系科学の知見に着目し、その知見が先行研究である単一の仮想ネットワークスライスの設計手法だけでなく、複数のスライスが混在する環境下でのスライス設計にも応用できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、手法の検討、および性能評価を進めつつ、国内学会および国際会議で年に1回ずつの研究発表を行う計画であった。令和2年度はその目標のうち、国内学会発表1件のみにとどまっているが、国際会議での発表に向けた準備を進めており、おおむね順調に進展していると判断できる。 手法の検討、および性能評価に関しては、2つのスライスがユーザ数の増加に合わせて交互に規模拡張・再構成されていく状況において、提案手法が整数計画法によるアプローチに比べて、スライス再構成に要するコスト、すなわち仮想マシン(VNF)のマイグレーション頻度を3分の1程度に抑えるにも関わらず、VNF-ユーザ端末間の平均パス長の悪化は20%程度に抑制できることを確認した。この成果より、顕著性に基づくスライス設計手法が、複数のスライスが共生する環境下でも応用可能であることを確認した。 研究発表に関しては、国内では令和3年3月に開催された電子情報通信学会情報ネットワーク研究会にて発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
第一段階の成果をまとめ、国際会議(査読付き)に投稿する予定である。また、本研究計画の第二段階として掲げていた、2つ以上のスライスが同時に存在し、なおかつスライスの数が増加・減少が繰り返される環境を想定したスライス設計手法の検討を行う。第一段階では、先述の通り、2つのスライスが共生し、それぞれが徐々に規模拡張/再構成されていくシナリオについてのみ評価を行ってきた。しかしながら、実際のネットワーク運用時には3つ以上のスライスが共生し、利用状況に応じてスライスの追加・削除が行われることが想定される。持続的な成長可能性を持たせるためには、現在のスライス数にのみ適応した設計ではなく、将来のスライスの追加および削除できる余地を残した配置を検討する必要があると考えられ、これに着手する。 また、複数スライス共生環境の構築に向けた上記の検討と並行し、実ネットワークへの運用を想定したPoC(proof of concept、概念検証)の構築も進めていく予定である。実機環境においては、スライスを構成する仮想マシンのマイグレーション時に、サーバ機器間のデータ転送やマイグレーション先での受け入れ準備など、様々な要因により一時的なサービス断や性能低下が見込まれる。まず検証環境を構築し、そのコストを定性的に評価する環境を構築し、その環境における評価の結果を手法の検討・評価時の参考とする。その後、検証基盤は提案手法の実機検証に向けた実装基盤として利用していく。 また、本研究の成果を社会に発信するため、国内学会や国際会議での対外発表を積極的に行う予定である。研究成果を積極的に論文投稿し、国内外に研究成果をアピールし認知を図る。
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Causes of Carryover |
令和2年度の研究成果を国際会議に投稿し、現地に赴き発表を行う計画であったが、昨今の社会情勢を鑑みて、国際会議への投稿・参加を見送り、旅費の余剰分を物品購入費に充て、提案手法のシミュレーション評価などを重点的に行なった。そうした研究計画の変更に伴い次年度利用額が生じたものである。当該金額は現在登校準備を進めている国際会議原稿の英文校正費用および採録時の論文掲載料に充てる計画である。
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Research Products
(1 results)