2021 Fiscal Year Research-status Report
5G網におけるリンク顕著性に着目したネットワークスライス共生環境構築手法の研究
Project/Area Number |
20K19796
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
平山 孝弘 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワーク研究所ネットワークアーキテクチャ研究室, 主任研究員 (70745687)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネットワーク仮想化技術 / ネットワークスライシング / 複雑系ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、第5世代移動通信システム(5G)において、超高速通信、超大量端末通信、超高信頼低遅延通信をはじめとする、様々なサービスに特化した無数の仮想ネットワーク(スライス)が同一通信基盤上で混在する環境において、顕著性に基づき複数のスライスを共生させるための複数スライス設計・再構築手法について検討を進めている。令和3年度は、複数のスライスが共生する環境において、それらのスライスが段階的に規模拡張(ノードの追加およびスライスの再構成)を続けるシナリオにおけるスライス再構成手法の検討および性能評価を行い、海外の学術論文誌への投稿を行った。
本研究計画の2年目である今年度(令和3年度)の目標として、3つ以上のスライスの共生を考慮した提案手法の拡張および評価を行い、学術論文誌への採録を目指した。初年度は、適用範囲を2つのスライスの共生に絞り、一方のスライスへサービスを提供するノードは、もう一方のスライスには利用されないように、競合を避けてスライスを設計する手法を提案した。今年度(令和3年度)はこの拡張として、ノードおよびリンク容量を設定し、一つのノードまたはリンクに十分な空き容量が存在する場合には、複数のスライスに対して資源を提供できるという、より実用に近い環境に対応するべく手法を拡張した。具体的には、スライスに機能を提供するサーバと、サーバ間を結ぶ通信路となるリンクの選択手法について検討した。既存手法である媒介中心性に基づくスライス設計手法と比較して、仮想マシンのサーバ間のマイグレーション頻度、スライス規模拡張の棄却率などの点で提案手法が優れた性能を示すことを確認した。
本研究では、顕著性という複雑系科学の知見に着目し、その知見が先行研究である単一の仮想ネットワークスライスの設計手法だけでなく、複数のスライスが混在する環境下でのスライス設計にも応用できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度中に海外の学術論文誌への掲載を目指し、手法の検討、性能評価および論文執筆作業を進めていたが、当年度中の採録は叶わなかった。しかしながら、レビュアーからのコメント等を踏まえて論文の加筆修正を進めており、再投稿への準備が整っているため、おおむね順調に進展していると判断できる。 手法の検討、および性能評価に関しては、複数のスライスがユーザ数の増加に合わせて規模拡張・再構成される状況において、提案手法が既存手法に比べてスライス再構成に要するコスト、すなわち仮想マシン(VM)のマイグレーション頻度を抑制できることを確認した。また、ノード/リンクに十分な空きリソースが無い場合にはスライス規模拡張が棄却される条件下では、棄却頻度を既存手法に比べて15%程度抑制できることを確認した。なお、提案手法は顕著性に基づく設計手法であり、既存手法は媒介中心性と呼ばれるネットワークの指標に基づく設計手法である。この成果により、顕著性に基づくスライス設計手法が、ノード/リンクの容量に制限のある環境でも、複数のスライスを共生させる際に有用であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は開始当初は2年で終了の予定であったため、手法の検討及び性能評価についてはおおむね完了している。期間延長した3年目は、これまでの研究成果をまとめ、学術論文誌へに採録されることをめざし研究業務を進める。インパクトファクターの高い学術論文誌へ積極的に投稿し、本研究の成果を社会に発信することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究開始当初は研究成果を国際会議に投稿し現地に赴き発表を行う計画であったが、昨今の社会情勢を鑑みて、高名な学術論文誌への掲載を目指す方針に変更した。残念ながら実施期間中の採録に至らなかったため、期間を延長し論文誌への掲載を目指すこととした。なお、残額は採録時の論文掲載料に充てる計画である。
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