2020 Fiscal Year Research-status Report
全身運動のための触錯覚による力覚提示装置の開発と応用
Project/Area Number |
20K19844
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 拓人 東京工業大学, 情報理工学院, JSPS特別研究員 (10854036)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 力覚提示 / 運動予測 / ハンガー反射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画内容①ハンガー反射の新たな適用部位及び方向の調査を行った.本研究では,「ハンガー反射」現象と呼ばれる触覚の錯覚現象を用いて小型・軽量な力覚提示デバイスを実現する.応用先として全身運動が伴うVR体験を考えており,現象の全身運動への適用のために,現象の新たな適用部位調査が必要だった.申請書提出後に他の研究グループによって,膝においても現象が発生することが確認された.これは,当初予想した関節付近の皮膚と骨の距離が近い部位という特徴と一致している.よって,本研究では同様の特徴を持つ肘への現象適用を試みた. ハンガー反射の肘への適用するために,肘用デバイスを開発した.肘用デバイスは肘を覆うABS製のU字フレームで,内部に4つのエアバルーンを搭載する.エアバルーンを外部の制御ユニットにより制御することで,任意の圧迫を肘に与え,ハンガー反射の発生に必要な皮膚のせん断変形(横ずれ)を提示する.肘には前腕を構成する尺骨と橈骨がつながっており,これらを圧迫することで,回内・回外方向の皮膚のせん断変形を生成した.デバイスを用いた被験者実験を行ったところ,提示方向と被験者の回答した力覚方向が有意に一致し,被験者の腕回転運動も確認できた. また,将来的な現象の全身適用を鑑み,多数のエアバルーン制御が必要となる.そこで,当初の予定を前倒しにし,多数エアバルーンを制御可能な制御ユニットを開発した.これにより,両膝(4個×2箇所),両手首(4個×2箇所),両肘(4個×2箇所),腰(4個),頭(4個)に装着した合計32個のエアバルーンを制御可能とし,全身への力覚提示を実現させる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の初年度の予定は,「ハンガー反射」現象の新たな適用部位調査であった.実際に調査を行い,本現象の肘への適用を確認した.それに加えて,2年目に行う予定であった多数のエアバルーン制御ユニットの開発も着手できた.以上より,本研究は当初の計画以上に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は初年度で開発できた多数バルーン制御ユニットを用いて,実際に全身運動用の力覚提示装置の開発を行う.肘用デバイスで用いた,各部位用フレームと4個のエアバルーンを基本構成とし,適用予定の膝,手首,肘,腰,頭のためのデバイス設計・開発を行う.制御ユニットからの共有空気量の調整や,最小構成アクチュエータ数の調整を積極的に行い,VR体験中にリュックなどで持ち運ぶ際の負担を可能な限り減らす.
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