2020 Fiscal Year Research-status Report
仮想空間における身体変化の人間の知覚・行動への影響の検討
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20K19853
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松室 美紀 立命館大学, 情報理工学部, 特任助教 (90822859)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 身体表象 / 身体所有感 / 痛み / 固有受容感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
身体の心的表象の変化が知覚に与える影響を調べるため,実験を行った.具体的には,身体が半透明となることと痛みの主観的な強度の関係を検討した.特に,身体の半透明化の効果と身体所有感の効果を区別するため,身体所有感を高める操作が異なるいくつかの実験を行った.その結果から,身体を半透明とすることにより,痛みの主観的な強度が減少すること,および,この効果は身体所有感が高い時により高いことが明らかとされた.これらの実験の結果を論文にまとめ投稿し,現在査読中である. これらの実験では,参加者自身の前腕を撮影し,映像に操作を加え,リアルタイムで参加者に提示していた.一方で,多くの先行研究では仮想の前腕を用い知覚の変化を調べていた.そこで,現在は参加者自身の前腕を使用することと仮想の前腕を使用することにより,効果に差異が生じるかの検討を進めている. また,前腕の表示位置を操作することにより生じる,前腕がどこにあるかという固有受容感覚の変化の検討もおこなった.特に対照的に位置する部位である両前腕の固有受容感覚の変化に影響する要因を検討するための実験を行った.その結果から,顕在的な前腕の位置の手がかりとなる両腕の位置の対応づけは変化を促進しないことが明らかとされた.本実験の結果は,顕在的に行われる身体表象の修正と,潜在的に行われる身体表象の変更の差異を示唆しており,CogSci2021にて発表予定である (採択済み).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響により,実験の実施が困難なため,予定していた程度の実験が実施できていない.実験の準備を十分に行うとともに,必要な実験を厳選することにより対応していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から身体表象の変化と痛みの主観的強度の関連には身体所有感が影響することが示唆された.それらの実験では参加者自身の前腕を用いたため,比較的高い身体所有感が保持されたものと考えられる.そのため,上述のとおり,参加者自身の前腕を用いた場合と仮想の前腕を用いた場合の痛み知覚への影響の差異を検討する.また,身体の透明感の効果と身体所有感の効果をより独立して検討するための新たな操作を比較し,実験に導入する予定である. 前腕の固有受容感覚の変化に関しては,変化の測定を目的とした課題が目的に対し不十分であったため,新たな課題を導入し,さらに検討を重ねる.また,身体の対称性が固有受容感覚の変化に与える影響をより詳細に検討するため,前腕以外の対照的な部位,対照ではない部位や身体の片側のみを用いた課題を通した変化と比較を行う.これらの実験を通し,固有受容感覚,ひいては自身の身体の身体表象がどのように形成,修正されるのかを検討する.
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Causes of Carryover |
COVID-19の流行により,予定したほどの実験が実施できなかったため.次年度は,対面による実験と合わせweb調査等の対面を必要としない調査を実施する.
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Research Products
(3 results)