2020 Fiscal Year Research-status Report
360度空間の注意分布の計測:ヒューマンインタラクションのための人間特性研究
Project/Area Number |
20K19855
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
原田 佑規 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 流動研究員 (80869280)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 注意 / 仮想現実 / 拡張現実 / 視覚認知 / 認知支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,拡張現実技術による認知支援の効果を高めるための基盤研究として,360度方向の注意分布が空間のパターンや視覚情報の量によってどのように変化するかを定量的に計測する。本研究の成果は,不注意を防止するヒューマンインタラクションコンテンツの開発に必要な認知心理学的知見を提供する。 令和2年度は,(1)360度方向の注意分布を計測するための実験プロトコルを開発し,(2)空間のパターンの影響を定量的に検討した。まず,本研究代表者の所属が国立障害者リハビリテーションセンターに移動したため、実験環境のセッティングを一から整える必要があった。具体的には,新規の研究計画の倫理申請を提出して承認を受けた。次に,実験に必要なPC,ヘッドマウントディスプレイ,コントローラ,センサーを購入し動作確認した。さらにに,視覚情報の呈示と行動・視線指標の計測を行うための行動計測用の実験プログラムを作成し,バーチャルリアリティ空間における視覚探索課題を実施した。この実験では,白色もしくは黒色のドットがターゲットとして360度の空間のどこか一点に呈示され,参加者はこのドットを可能な限り素早く探し,その色に対応したボタンを押した。その結果,探索中の視線の配分は空間パターンの顕著性に対応して変化することを発見した。このことは,360度の注意分布は空間パターンに依存して変化すること,言い換えれば空間パターンのセンシングからユーザの注意行動をある程度予測できる可能性を示唆する。この結果は電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ(HCG2020)で発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属の移動に伴い実験環境を一からセッティングし,新規の倫理申請の承認を受ける必要があった。さらにCOVID-19の流行による緊急事態宣言のため,被験者実験の実施に遅れが生じた。その一方で,計測プロトコルの開発に成功し,計測結果を研究会で発表することができたため,大きな遅れではないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,360度環境における注意分布を変化させる要因を検討する。近年では拡張情報の表示によってユーザの視覚情報処理を支援する試みが行われているが,この時の拡張情報の種類や情報量が360度の注意分布に及ぼす影響はいまだに明らかとなっていない。この問題に対応するために,令和3年度は拡張情報の種類や情報量が360度の注意に及ぼす影響について行動指標と視線を用いて検討していく。
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Causes of Carryover |
主に,次の実験の実験環境のセッティング費用,被験者実験の謝金,そして研究公表のための費用として,基金の次年度使用が必要となった。まず,計測に必要な基本的な機材はすでに購入済みであるものの,拡張情報や計測プログラムの開発費用と現実の場面を取り込むための360度カメラの購入費用のため80万円を使用する予定である。さらに,実験実施の際の被験者謝金のため約40万円を使用する予定である。データの解析はMATLAB(30万円)とSurfer(10万円)を用いる。そして,学会発表のための旅費・参加費,および論文執筆のための英文校正費用と掲載料として40万円を使用する予定である。
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