2020 Fiscal Year Research-status Report
ネットワークシステムの無秩序性を活用した協調動作安定化とその制御・設計
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20K19881
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
杉谷 栄規 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (40780474)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 振動停止現象 / 同期現象 / 結合発振器ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
同期現象と振動停止現象それぞれの研究成果を説明する. 同期現象に関しては,結合しているカオス発振器の個々の時定数を非一様にすることで,カオス同期が誘発されることを発見した.カオス発振器には,パラメータ依存性があることが知られており,同じダイナミクスを持つカオス発振器であっても,パラメータが異なれば,それらカオス発振器の軌道は互いに離れていく.そのため,パラメータの非一様性は,カオス同期を弱める働きをすると信じられていた.今回,研究代表者は,これまでの知見とは正反対に,パラメータの非一様性がカオス同期を強めることを発見した.方法としては,パラメータが同一のカオス発振器を用意し,カオス同期が達成される結合強度よりも少し弱い結合強度でそれらを結合し,パラメータを適切に非一様に設定することでカオス同期が達成されることを観測した.上記の成果は,学術論文として出版されている. 振動停止現象に関しては,木構造グラフを持つ発振器ネットワークにおいて結合遅延と振動停止現象の安定性を議論し,ある条件を満たすことで,結合遅延が非一様な場合と一様な場合の安定性が等しくなることを発見した.この成果は,学術論文として採択されている.また,上記の結果を拡張し,非一様な結合遅延における一般的グラフにおける振動停止現象の安定性の導出方法を発見した.これまでの研究では,特性多項式の導出及び分解のために,一様な結合遅延のみが扱われてきたが,制御工学の周波数領域解析を上手く活用することで,非一様な結合遅延における多項式の導出方法を発見し,結合遅延と安定性の間に興味深い関係があることを発見した.この成果は,現在論文として執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同期現象,振動停止現象それぞれにおいて,申請書に記載の通りのスケジュールで研究成果が出ており,それらが著名な学術論文誌に採択されているため研究の進捗は順調であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
同期現象においての成果は,最大で5個のカオス発振器から成る小規模ネットワークのみを扱っていた.そのため,今後は,発振器数が100個単位の非常に大規模なネットワークにおいても,パラメータ非一様性がカオス同期を誘発するか否かについて議論する必要がある.また,上記の研究の中で,パラメータの非一様性が非常に大きい場合でも,カオス同期が誘発されるという興味深い現象が確認されている.なぜ,パラメータがそこまで異なってもそれら発振器が同じ同期多様体に収束するのかについて,分岐解析などを用いて議論する必要がある. また,振動停止現象に関しては,現在執筆中の一般グラフにおける結合遅延と振動停止現象の関係性について,制御工学の知見を基に,理論の証明をしっかりと行い,学術論文としてまとめることが必要である.また,上記の成果は,数値シミュレーションでの確認しか行われていないため,電子回路などを用いて実証する必要がある.
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で,学会がオンラインで行われることになり,旅費が不要になったため. 次年度は,研究発表のための学会参加費および数値計算ソフトウェアの購入のために使用予定である.
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Research Products
(3 results)