2023 Fiscal Year Research-status Report
アンサンブル演奏におけるリズム協調機構の数理的解明
Project/Area Number |
20K19883
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
紅林 亘 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (70761211)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 認知科学 / 同期現象 / 数理モデリング / 感覚運動同期 / リズム協調 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間がアンサンブル演奏や合唱をする際、複数人でリズムを同期させる必要がある。このとき自然に働いていると考えられる同期メカニズムについて、先行研究において確立され、この分野の多くの研究の基礎となっている代表的なモデルとして、Schulzeら(2005)やRepp & Keller (2008)などのモデルがあるが、これらのモデルではOkanoら(2017)の実験で報告された顕著なテンポ加速傾向を再現することができなかった。本研究では、これらの従来のモデルに自然かつ最低限の拡張を加えることで、テンポの加速傾向が再現されることを数値シミュレーションによって確認するとともに、このモデルを理論的に解析することによって、その詳細な数理的メカニズムを解明することができた。また、実験データから提案モデルのパラメータを推定するデータ分析手法を開発し、従来のモデルよりも提案モデルの方がよくデータを説明しうることを実証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画では、人間を対象とする行動実験を実施し、その実験データからモデルのパラメータを推定し、個々人が持つさまざまな特性や傾向について議論することを予定していた。しかしながら、コロナウイルス感染対策のため行動実験の被験者を募集することが困難であったという理由から、未だ行動実験を実施することができずにいる。幸いにして、コロナウイルスの流行状況が大幅に改善したことから、今後は従来の計画通り研究を遂行したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、人間のリズム協調について、従来の確立されたモデルに自然な拡張を加えることで、従来のモデルでは説明できなかったOkanoら(2017)の実験結果を説明できることが示され、人間のリズム協調について、特にテンポの加速傾向についての学術的知見を深化することができた。今後、この内容を学術論文にまとめて論文誌に投稿するとともに、国内外の学会・国際会議の場で発表して社会に公表したいと考えている。また、人間を対象とする行動実験を実施し、その実験データからモデルのパラメータを推定し、個々人が持つさまざまな特性や傾向について議論することを予定している。この内容についても、学術論文にまとめて論文誌に投稿するとともに、国内外の学会・国際会議の場で発表して社会に公表したい。
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Causes of Carryover |
本研究計画では人間を対象とする行動実験の実施を予定していたが、コロナウイルス感染対策のため行動実験の被験者を集めることができず、行動実験を実施できなかった。このため、行動実験を次年度に実施することとし、予算を次年度に繰り越すこととした。また、同様の理由で論文執筆なども当初の予定より遅れており、英文校正や掲載費なども同様に次年度に繰り越すこととした。
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