2020 Fiscal Year Research-status Report
Economic theory of information markets based on information science
Project/Area Number |
20K19884
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
上田 仁彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (00826571)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 予測市場 / 共有知識 / 効率的市場仮説 / 繰り返しゲーム / ゼロ行列式戦略 / しっぺ返し戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、市場における情報統合プロセスの解析を行った。金融市場において、証券に関する各トレーダーの持つ情報は順次価格に反映されていき、均衡状態においては全ての情報が価格に反映されると期待されている。しかしこの動的なプロセスが実際にどのように実現されるかは明確ではない。この問題を理解するために分散情報市場モデルが提案されてきた。このモデルでは各トレーダーが証券に関する1ビットの私的情報を持つ状況の下で全てのトレーダーが全員のもつ情報を決済価格の推移を見るだけで統合できるかどうかを扱っている。先行研究では、証券が各エージェントの情報の重み付き閾値関数の場合に、かつその場合に限り、真の状態が任意の事前分布に対して共有知識(全員が知っており、全員が知ってることを全員が知っており、…、というプロセスが無限まで成り立つような事象)となることが示された。申請者はこの解析を進めて、証券が他のいくつかのブール関数の場合に、真の状態が共有知識となる事前分布とならない事前分布を特定することができた。 また、繰り返しゲームにおけるゼロ行列式戦略の拡張を行った。ゼロ行列式戦略はプレイヤーの平均利得に対して一方的に線形関係式を課すような戦略である。本年度申請者は利得のモーメントに一方的に線形関係式を課す「変形ゼロ行列式戦略」という概念を導入した。そして、繰り返し囚人のジレンマゲームにおけるしっぺ返し戦略が2人のプレイヤーの利得の全てのモーメントを同時に一方的に等しくするような変形ゼロ行列式戦略となっていることを示した。別の言い方をすれば、しっぺ返し戦略は2人のプレイヤーの利得のモーメント母関数を一方的に等しくするような戦略となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず予測市場の研究については、市場の行っている情報統合プロセスを論理演算のような情報科学的な観点から捉える方向へと進み出すことができた。また、ゼロ行列式戦略の研究は当初の計画にはなかったが、利得の制御を考える上で重要なテーマであるので研究を進めた。両テーマについて論文を出版することができたので、進捗状況はおおむね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では共有知識形成のための逐次的情報開示プロセスにエラーがないことを仮定していたが、この仮定は現実的ではないだろう。一方、予測市場におけるMarket Scoring Ruleの解析においても逐次的情報開示プロセスと同様の過程が現れる。Market Scoring Ruleの先行研究でもやはりエラーがないことが仮定されているので、申請者は今後、エラーを生じるエージェントの存在する場合の共有知識形成プロセスの考案を行っていきたい。
|
Causes of Carryover |
本年度は研究成果概要に記載した以外にも成果が得られつつあるが、論文出版には至ることができなかった。次年度使用額はこれらの成果のオープンアクセス費に充てる予定である。また、新型コロナ禍で出張を一度も行わなかったことも次年度使用額が生じた原因の一つである。次年度は可能であれば徐々に対外発表の機会を増やしていきたい。
|
Research Products
(3 results)