2021 Fiscal Year Research-status Report
異なるモダリティの嫌悪対象への選好形成に共通する神経基盤の解明
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20K19906
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川上 愛 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (70722007)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 悲しい音楽 / 感情 / アンビバレント / 共感性 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、自身の生存の確率を高めるために、不快な刺激や感情を回避しようとする。 一方、「不快さ」が欲求の対象となる例も散見される。例えば音楽鑑賞では、通常感情心理学においては回避される感情であるところの「悲しみ」が表現される音楽を人々が進んで聴取することがある。 これに関しては、今年度、文献調査により、ポーランド音楽特有の「ジャル(悲哀)」に関する考察を深めることができた。ジャルというポーランド語は、他の言語では表すことができない概念を含んでいるようであるが、そこに表現された悲しみを我々は音楽を通じて享受し、強制的に音楽を聴取させられる状況である場合を除けば、我々は通常は回避すべき悲しみという感情を音楽聴取という行動によって享受することになる。 自ら悲しみを享受するという、この一見すると相反するような人間の行動について、本研究では対象(音楽)が表現する感情と対象を享受するヒトが体験している感情を区別して捉え、それぞれを個別に測定することでこのアンビバレントな現象を追求することを目的としている。 今年度も引き続き新型コロナウイルスによる影響で、感染拡大防止の観点から人を集めて実験に参加してもらうこと自体が難しく、特に本研究の実験では飛沫が飛ぶ恐れがある計画であったことから、特に注意を要するものであった。感染状況を随時把握しながら、実験実施のタイミングを図ると同時に、今年度は所属する研究機関が変わったことから、新たに実験室環境の整備などが必要となった。そのため、機材の整備、研究倫理書類の作成なども含め、実験実施の準備に取り組んだ。また、昨年度に引き続き、音楽研究における刺激である音楽の著作権の問題を考慮し、音楽刺激の録音にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、今年度は人を対象とした心理実験を行う予定であったが、前年度に引き続き、新型コロナウイルスによる影響で、感染拡大防止のため人を集めて実験に参加してもらうこと自体が難しい状況であった。代替案として、こちらで用意した実験室で実験を行うのではなく、在宅で実験に参加してもらうオンラインでの調査も可能性として考えられたが、在宅での 調査となると、参加する人によって音楽を聴く環境を統一することが難しく、また本研究の核心であるモダリティ間の違いを捉えることが不可能になるため、やむなく来年度に心理実験を実施することになった。 また、今年度は所属する研究機関が変わったこともあり、実験を実施するにあたり、実験環境を整える必要があった。そこで、実験室の整備、文献調査、整理、倫理書類の作成に取り組んだ他、音楽刺激の録音にも着手した。 加えて、令和4年1月、研究代表者に不測の体調不良が生じ、同年3月に手術を受けることになった。 これに伴い、研究代表者が積極的に研究活動を実施することが困難な状況となり、実験実施に遅延が生じた。 ただ、手術の経過は順調であるため、令和4年度の研究計画が遅延することは予想されない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度及び今年度録音した音楽刺激を用いて、人を対象とした心理実験を行う。 新型コロナウイルスによる感染状況との兼ね合いで、適宜実験のデザインを修正しながら心理実験を実施するが、難しい場合はオンライン調査に変更する予定である。 また、これまでに悲しい音楽に関する文献資料をまとめた論考を執筆し、投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、人を対象とした心理実験を実施する予定であり、実験参加者への謝礼を予算として確保していた。しかし、引き続き新型コロナウイルス流行により、人を集めての実験を実施することが困難であり、特に、本研究の実験デザインは、飛沫が飛ぶ恐れのあるものであったため、実験実施をやむなく見送ることになった。これに伴い、実験参加者への謝礼の予算を来年度に持ち越すことになった。また、令和4年1月、研究代表者に不測の体調不良が生じ、同年3月に手術を受けることになった。これに伴い、研究代表者が積極的に研究活動を実施することが困難な状況となり、文献をまとめた論考の執筆に遅延が生じ、論文作成に関わる費用を持ち越すことになった。次年度にこれら持ち越し分の使用を見込んでいる。
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