2022 Fiscal Year Research-status Report
社会ネットワーク上の意思表明タイミングに着目した集団意思決定の実証的・理論的研究
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20K19929
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 真利子 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (80838847)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 集団意思決定 / 集合知 / 逐次的意思決定 / 点過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は,集団意思決定における人々の意思表明タイミングと意思決定の正確さの関係を解明することである. 2022年度は,まずこれまで行ってきた逐次的意思決定モデルの理論解析について結果をまとめ,成果を国際学術誌で報告した.本研究では,独立に意思決定した際の正答率(能力)が互いに異なる人々の集団意思決定を考慮し,彼らの意思決定の順番が個々人のパフォーマンスに与える影響を調べた.その結果,意思決定の順番が人々の意見間の相関の強さに多大に影響を与え,個々人のパフォーマンスはその相関の強さに左右されることを示すことができた.さらに「能力の高い人がより早く意思決定をするほど,後に意思決定する人のパフォーマンスが落ちてしまう」という,反直感的な現象が起き得ることを理論の観点から提案した.この現象は,集合知が統計的な要因により生み出される仕組みと深く関連する.本研究結果は,集合知の解明に関する今後の研究に貢献できると期待する. また,TVコマーシャル(CM)データ等を用いた実証分析について成果発表を行なった.本研究では,マス広告であるCMが人々の購買の意思決定やタイミングに与える影響を調べた.個々人の購買行動に対するCMの影響を時系列解析により示し,CMの影響力と消費者の属性や商品カテゴリーの間の関係を評価した.マスメディアの存在により人々の意見同士の相関が強くなってしまうことや,個々人の意見間の相関関係が集団意思決定の正確さに多大に影響を与えることがこれまで先行研究で示されている,本研究は,マスメディアの影響力が情報の受け手や内容に依存することを実証的に示している.この結果を参考に,マスメディアが発信する情報や人々の感受性の異質性を考慮した集団意思決定の理論解析が可能になると期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集団意思決定における人々の意思表明の順番と意思決定の正確さの関係について,これまで行なってきた理論解析を取りまとめ学術誌に発表することができたため.また,CMと購買意思決定という実例のもとで,マスメディアからの情報に対する個々人の反応の異質性を示すことができたため.この知見は,集団意思決定における個人の意思決定タイミングをモデル化する際に有用であると期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本課題では,集団における人々の意思表明の時間的な分布を定量化することも行なってきた.そこでは,人々の意思表明タイミングを意思表明時刻の系列である点過程時系列で表現し,様々な点過程解析手法を適用させることを試みてきた.その過程で,短時間に多くの意思表明がされるような状況をより精緻に捉えるためにHawkes過程を考慮した分析が有用であると考えた.2023年度は,意思表明タイミングの特徴と集団意思決定の正確さの関係について,Hawkes過程等を考慮した解析を追加し,研究成果をまとめて学術誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
2022年度は,新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し国際会議等への参加を見送ったため,次年度使用額が生じた.また,意思表明の点過程時系列をより精緻に分析するために,これまで十分に検討していなかったHawkes過程等の適用を試みる必要性が生じた.この分析を行い,その結果を国際会議や学術誌で発表するのにかかる経費として,次年度に研究費を使用する.
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Research Products
(3 results)