2021 Fiscal Year Research-status Report
同一ユーザの消費情報と創作情報の二面性を考慮したユーザ生成コンテンツ推薦
Project/Area Number |
20K19934
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佃 洸摂 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (40760020)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 情報推薦 / 楽曲推薦 / Webサービス / ユーザインタラクション / 歌詞閲覧 / ユーザ行動分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な実績は以下の二点である。 一点目の研究では、人々がWeb上で集まって同じ瞬間に同じ楽曲を聴きながら、リアルタイムにコミュニケーションが取れるWebサービスである、音楽発掘カフェ「Kiite Cafe」を提案した。このWebサービスでユーザが楽曲を聴取する体験は、(ⅰ)各ユーザの楽曲に対する「好き」という反応が可視化される、(ⅱ)Kiite Cafeで再生される楽曲はユーザの好みの楽曲から選択される、という2つのアーキテクチャによって特徴づけられる。これらのアーキテクチャによって(1)再生中の楽曲に対して「好き」を伝えることの動機づけ、(2)多様な楽曲を好きになる機会の獲得、(3)キュレータとしての貢献、という3つの体験がユーザにもたらされる。1,760名のユーザによる5ヶ月間のKiite Cafeの利用ログを分析し、これらの体験を通して生まれる、ユーザにとってポジティブな影響を定量的に示した。以上の成果を国際会議ISMIR 2021および国内会議第132回音楽情報科学研究会で発表した。国内会議のインタラクション2022でも発表し、インタラクティブ発表賞(一般)を受賞した。 二点目の研究では、スマートフォンでの楽曲聴取時に、人がなぜ・どのように歌詞を閲覧しているのかについて調査した。「なぜ」に答えるためにアンケートを実施し、206名から得られた回答を分析した。「どのように」に答えるために、スマートフォンの音楽配信アプリから収集された2,300万件以上の歌詞閲覧ログを分析した。これらの分析に加えて、分析から得られた知見を活用することで、人々がより積極的に歌詞を閲覧したり未知の曲を聴いたりしたくなるような、特に楽曲配信プラットフォームにとって有益であると考えられる機能の例も提示した。以上の成果を国際会議ISMIR 2021および国内会議第17回WI2研究会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、プロのクリエータだけでなく一般の人々であっても容易にコンテンツの創作が可能となった結果として、多くの人が消費者としての役割と創作者としての役割の二面性を持ち合わせている点に着目している。多くの人が創作者として振る舞うことで、世の中はこれまで以上に大量のコンテンツで溢れることになる。そのような状況でも、Kiite Cafeがより多様なコンテンツ(楽曲)に触れる機会を提供する場となっていることを一点目の研究成果で示した。二点目の研究では、歌詞閲覧という、ユーザのコンテンツの消費方法を調査することで、新たな観点でのコンテンツの推薦方法を提案した。以上のような点から、コンテンツの消費・創作を取り巻く現状の改善に向けておおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
コンテンツの消費・創作を取り巻く現状の改善に向けて以下の二点の課題に取り組む。 課題1:コンテンツを消費するユーザの意図を柔軟に反映可能な、コンテンツ推薦モデルの開発。 課題2:特に音楽ドメインを対象とした、人々の音楽コンテンツに対する振る舞いの分析および、分析結果に基づく音楽コンテンツ推薦方法の検討。
|
Causes of Carryover |
国際会議や国内会議がオンライン開催となったため、旅費として想定していた額などで次年度使用額が生じた。これらは設備費や、アンケートを実施するための役務の発注等に使用する予定である。
|