2021 Fiscal Year Research-status Report
東シベリア永久凍土帯に生育する樹木の異常気象に対する脆弱性
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20K19950
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
鄭 峻介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40710661)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 樹木年輪 / 東シベリア / 永久凍土 / 異常気象 / 気候変動 / 脆弱性 |
Outline of Annual Research Achievements |
東シベリアのタイガ林、及びタイガ・ツンドラ境界域に生育するカラマツの過去150年間における成長量変動特性を明らかにするために、課題代表者がこれまでに採取・計測済みのカラマツ年輪幅データ、および樹木年輪データの国際データベース(International Tree Ring Data bank: ITRDB)を活用した解析を実施し、極端な成長量減少イベントの時間変化をサイト毎に明らかにした。 東シベリアのタイガ林(ヤクーツク・エレゲイ)、及びタイガ・ツンドラ境界域(チョクルダ)サイトにおいて、優占樹種であるカラマツの年輪幅時系列から、過去150年間における、サイト内の多くの個体で極端に成長量が減少した特徴的な年(成長量極端減少イベント)を抽出した。過去における成長量極端減少イベントの時系列変化は、サイト毎に異なっており、タイガ・ツンドラ境界域(チョクルダ)、山地タイガ(エレゲイ)、平地タイガ(ヤクーツク)の順で観測頻度が高い傾向が明らかとなった。本解析は課題代表者が過去に採取した年輪試料とデータベース上の年輪幅時系列データを活用した解析であり、各個体のサイズ・微地形環境の情報は付随していないため、それらを考慮した解析は不可能であったが、気象データが存在する過去100-150年間において、複数回の成長量極端減少イベントが観測されることをすべてのサイトで確認した。今後、気象データとの比較解析により、成長量極端減少イベントの要因となりうる気象因子を推定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の影響により、東シベリアのタイガ林サイト(ヤクーツク; 62N, 129E、エレゲイ; 60N, 133E)、及びタイガ-ツンドラ境界域サイト(チョクルダ; 70N,149E)で予定していた現地調査を、令和2年度に引き続き令和3年度も中止せざるを得なかった。 そのため、課題代表者が過去に採取した樹木年輪試料とデータベース上の年輪幅時系列データを活用した解析を実施してきたが、各個体のサイズ・微地形環境の情報は付随していないため、それらを考慮した解析は進められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナの影響で、令和2-3年度に実施できなかった現地観測を、東シベリアのタイガ林サイト(ヤクーツク)、及びタイガ・ツンドラ境界域サイト(チョクルダ)で実施する。観測実施項目は、①年輪コア試料採取、②樹高・胸高直径計測、③比高(微地形起伏)計測、④土壌水分量計測、⑤地温計測、⑥融解深計測の6点である。そのうえで、個体ベースの新しい樹木年輪生態学の確立を試み、樹木年輪幅時系列から樹木1本1本の過去の成長量(CO2吸収量)変動を求め、過去の様々な種類(極端な高温/低温、大雨/干ばつ)・規模・長さの異常気象に対する樹木応答・脆弱性を、各個体生育場所の微地形起伏・樹木サイズ特性を考慮した上で、明らかにする。 一方、令和4年度においても現地調査が難しい場合は、樹木年輪データベース等を活用した解析を東シベリア広域で実施し、過去100-250年間における樹木成長量変動を復元するとともに、気候変動との関係性を広域で明らかにする。特に、過去に異常気象が観測された年(気象データから推定)の前後における樹木成長量変化に着目する。東シベリア広域における樹木成長量と気候変動との関係性の時空間変動についても評価する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、令和2-3年度夏季に実施予定であった東シベリア現地調査を中止せざるを得なかった。そのため、調査旅費や、データ解析関連備品経費、さらには成果発表に関連する経費に関して次年度使用額が生じた。令和4年度に、現地調査を予定しており、令和2-3年度に予定していた調査旅費・データ解析関連備品経費・成果発表関連経費を使用する予定である。
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