2022 Fiscal Year Research-status Report
空間的不均一性を考慮した森林土壌における放射性セシウムの可給性評価
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20K19951
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高橋 純子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30714844)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 選択流 / 人工降雨実験 / 森林除染 / 福島第一原子力発電所事故 / 放射性セシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
福島県の森林整備面積は震災から12年が経過した現在も震災以前の半分に留まっており、林業復興を進める上で、森林内の空間線量率や樹木によるCs-137吸収量の将来予測が求められている。しかし、実際には森林内のCs-137の分布は空間的不均一性が非常に高く、樹木の材や葉のCs-137濃度をその地点のCs-137沈着量で割った値である面移行係数(Tag)などが同一サイトであっても大きくばらつき、予測精度に影響を与えているという問題がある。本研究では、この空間的不均一性を生む要因として土壌中での選択流に着目し、研究を実施している。 本年度は、南相馬市の旧避難地域において森林間伐を予定している地点に新たに調査地を設け、染料を用いた人工降雨実験を行い、深度別に染色部と非染色部の土壌を採取するとともに写真を撮影した。また、深度別に土壌コアによるサンプリングも実施し、土壌物理性と選択流の影響およびCs-137分布との関係を調査した。 その結果、人工降雨の雨量は約200 mmと非常に強い雨だったにも関わらず、表層から染まっていない部分が確認され、選択流の発生が認められた。また、深度別に染色部と非染色部の土壌中のCs-137濃度を比較したところ、染色部の分散が有意に高い結果となった。t検定では、染色部の分散が大きいことを反映して有意な差は認められなかったものの、全深度で染色部の方がCs-137濃度が高い結果となった。とくに差が大きかったのは10-15 cmで約6.6倍であり、20 cm以下ではその差は約1.7倍と小さかった。さらに、10-15 cmでは飽和透水係数が高いコアサンプルほどCs-137濃度も高い傾向が認められた。この関係は0-5 cmおよび20-25 cmでは認められず、選択流はとくに10-15 cmの範囲で強くCs-137濃度に影響を与えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに森林間伐を実施するサイトで研究できるよう調整したため、間伐後も同様に調査できるよう研究期間を1年延長したが、実験結果は仮説の通り選択流の影響を示すことができ、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、採取した染色部および非染色部の土壌について、Cs-137濃度のみならず、Cs-137の化学形態や炭素含量、交換性陽イオン濃度など、他の土壌の性質についての分析も進める。さらに、サンプリング時に撮影した画像解析を進め、選択流の影響範囲(面積・体積)を定量化する。また、間伐はすでに終了しているため、同様の調査を実施し、間伐前後での比較を行う。
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Causes of Carryover |
ちょうど2022年秋に間伐をするサイトにおいて新たに調査地を設けることができたため、2023年度に間伐後の調査を実施できるよう1年延長した。間伐前後の比較を行うことで、森林管理によるCs-137の動態をより実践的に評価する。
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Research Products
(4 results)