2021 Fiscal Year Annual Research Report
福島原発事故により放出された放射性微粒子の環境動態解明に向けた溶解特性評価
Project/Area Number |
20K19954
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥村 大河 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90867508)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | セシウムボール / 珪酸塩ガラス / 合成 / 溶解速度 / 福島原発事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度はCsMPの組成を模擬したガラスの合成を実施した。CsMPと同様な組成を持つよう出発物質を調合してペレット状に成形し、リング状のレニウム製ワイヤー上に載せてガスバーナーで炙って固着させた。これを水素と二酸化炭素の混合ガスによって還元雰囲気にした電気炉にて1400℃で溶融した後、空冷することでガラスを得た。得られたガラスを分析した結果、全体が非晶質で構成されており、組成は概ね目標組成に近いガラスであることが確認できた。またガラス中のFeはほぼ2価で構成されており、CsMPを模擬するに足るガラスの合成が実現した。 本年度は合成した模擬ガラスを用い、純水および海水での溶解実験を実施した。まず模擬ガラスの研磨断面を作製し、その一部をRTVシリコーンゴムで被覆した。これにより、模擬ガラスを溶液に浸漬しても被覆部分には溶液が接触しない。このガラスを純水または人工海水に一定時間浸漬した後に回収し、イオン研磨によって断面試料を作製した。被覆した部分としていない部分との間に生じた段差(=ガラスの溶解した深さ)を走査電子顕微鏡によって測長し、さらにガラスの浸漬時間から溶解速度(μm/day)を算出した。90℃の人工海水に6日間浸漬した結果1.61 μmの段差が形成され、溶解速度は0.27 μm/dayと推定された。この値は、先行研究で求めた溶解速度0.98 μm/dayとオーダーが一致する。また90℃の純水に6日間浸漬した場合は段差が認められず、ほとんど溶解が進行していなかった。先行研究でCsMPの純水での溶解速度は非常に遅いことがわかっており、今回の結果と矛盾しない。以上から、模擬ガラスの溶解実験で得られた結果は先行研究を支持するものと言え、これまで明らかにしたCsMPの溶解特性の妥当性が示された。
|
Research Products
(5 results)