2020 Fiscal Year Research-status Report
大気酸化力の変遷復元に向けた新たなアプローチの確立:過酸化水素の三酸素同位体組成
Project/Area Number |
20K19961
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
石野 咲子 国立極地研究所, 研究教育系, 日本学術振興会特別研究員(PD) (70867431)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 三酸素同位体組成(Δ17O) / 大気酸化力 / 過酸化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人為活動の増大にともなう「大気酸化力(大気酸化剤の存在量)」の変遷を復元しうる新たな古環境指標の開拓を目的とし、過酸化水素の三酸素同位体組成(Δ17O(H2O2))の分析手法の確立に取り組んでいる。 2020年度(1年目)は、Δ17O(H2O2)分析の前段階で必要となる、雪氷・降水試料中のH2O2濃度の測定装置を立ち上げ、さらに自動化した。分析には連続流れ蛍光検出法を用いた。また、雪氷試料のH2O2濃度およびΔ17O(H2O2)の分析に向け、試料表面の汚染除去方法・保存条件(冷蔵/冷凍、日数)など、前処理方法の検討を行なった。立ち上げた装置を用い、グリーンランド北西部で採取された積雪中のH2O2濃度を分析した結果、夏に高濃度、冬に低濃度となる既知の季節変動が正しく観測された。先行研究に比べて精度・確度とも遜色のない測定ができることが確認できた。 主目的であるΔ17O(H2O2)分析については、自動化までを見据えた分析装置の設計を進めた。本研究では、H2O2を過マンガン酸カリウムとの反応によりO2分子に変換し、液体窒素温度(-196°C)に冷却したガス吸着剤による試料濃縮トラップを介し、連続フロー型安定同位体比質量分析計(CF-IRMS)でΔ17O値を測定するシステムを設計した。そして、過マンガン酸カリウムをはじめとした試薬や、試料濃縮トラップに用いるエア駆動バルブなど、分析に必要な物品の手配を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で必要となる、H2O2濃度とΔ17O(H2O2)の分析装置の立ち上げについて、前者を1年目のうちに完成させることができた。また、後者についても設計と部品の手配は概ね完了しており、2年目(2021年度)には分析装置を完成させ、3年目(2022年度)までに実試料の分析に取り組めることが見込まれる。このため、概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、Δ17O(H2O2)の分析装置を構築する。また、初年度に得られたグリーンランド北西部の積雪中のH2O2濃度の分析結果の解析を進め、国内外の学会や国際学術誌において成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していたヘリウムガス(45,000円)を用いた実験を、2021年度に持ち越したため。
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