2020 Fiscal Year Research-status Report
花粉の安定同位体比にもとづく古気候復元 ―定量的復元に向けたデータセットの構築―
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20K19966
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Research Institution | Fukui Prefectural Satoyama-Satoumi Research Institute |
Principal Investigator |
山崎 彬輝 福井県里山里海湖研究所, 研究部門, 研究員 (30845607)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 古気候 / 花粉 / スポロポレニン / 安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では「花粉を構成する元素」に着目し、花粉の安定同位体比と気候の対応関係にもとづいた初めての定量的な古気候復元を目指して、以下の2点を目的として設定する。 【目的①:花粉の安定同位体比変動と気候要素の定量的な関係を明らかにする】日本各地で採取した現生花粉の酸素・水素安定同位体比を測定する。これと気象データを比較することで、安定同位体比と気候の対応関係を解明する。 【目的②:化石花粉の安定同位体比から復元した古気候データの誤差や感度などを評価する】水月湖の年縞堆積物のうち、気象観測記録と比較可能な過去100年に相当する部分から化石花粉を高純度で抽出し、安定同位体比測定および古気候復元を行う。復元した古気候データと過去の観測記録を年単位で比較することで、データの誤差・感度・定量性などを評価する。 <新型コロナウイルスに関連する対応>初年度(2020年度)は、申請者が自ら全国各地に花粉試料を採取するためのフィールド調査を実施する予定であった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、申請者は花粉試料の収集方法とサンプリング地点数を大幅に変更した。2020年春のフィールド調査(花粉試料のサンプリング)については、申請者が全国各地に出張せず、全国の林業試験場および植物園への花粉採取の協力を依頼することで花粉試料の収集・確保に努めた。なお、2021年春のサンプリングは、感染状況と非常事態宣言発出の有無などを考慮し、サンプリングを実施した。東京大学総合研究博物館で実施する安定同位体比分析についても、申請者は東京へ赴かず、試料を郵送し大森博士に協力を依頼することで対応した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
<新型コロナウイルスに関連する対応>初年度(2020年度)は、申請者が自ら全国各地に花粉試料を採取するためのフィールド調査を実施する予定であった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、申請者は花粉試料の収集方法とサンプリング地点数を大幅に変更した。2020年春のフィールド調査(花粉試料のサンプリング)については、申請者が全国各地に出張せず、全国の林業試験場および植物園への花粉採取の協力を依頼することで花粉試料の収集・確保に努めた。なお、2021年春のサンプリングは、感染状況と非常事態宣言発出の有無などを考慮し、最小限のサンプリングを実施した。全国の林業試験場および植物園に花粉採取の協力を依頼したが、思うようにサンプルは集まらず、収拾したサンプルの生育する気候条件には、大きな粗密(バラつき)が生じているため、依然として、詳細な気候と安定同位体比の解析には至っていない。 東京大学総合研究博物館で実施する安定同位体比分析についても、申請者は東京へ赴かず、試料を郵送し大森博士に協力を依頼することで対応した。
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Strategy for Future Research Activity |
全国の林業試験場や植物園への花粉採取の協力依頼を続ける一方で、今後は、収集したサンプルの分析・解析に重心を置きながら、研究を推進することとする。 また、分析する樹種に優先順位をつけ、新型コロナウイルスの影響で生じた研究計画の遅れを取り戻す予定である。 【2021年度】2020年度の安定同位体比分析の結果を踏まえてサンプリング地点の選定を行い、ツガ属、モミ属、ハンノキ属の花粉を中心に全国で各10試料程度の採取を行う。これらの試料は2020年度と同様に処理・安定同位体比分析を行う。得られた同位体比の結果をもとに、気象条件との対応関係について検討する。 【2022年度】過年度までと同様に花粉試料のサンプリングを実施する。カバノキ属、ブナ属の花粉を中心に全国で各10試料程度の採取を行う。また、水月湖の年縞堆積物中に含まれる花粉を抽出し、安定同位体比の測定を行い、現生花粉の安定同位体比分析から構築された定量的復元のデータセットに基づいて古気候復元を行う。 【2023年度】これまでの成果をとりまとめ、論文の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
今年度に使用しなかった額の多くは、全国での花粉採取に係る旅費であった。そのため、サンプリング計画の変更に伴い、今年度は想定していた規模でのサンプリングを実施しなかったため、使用しなかった旅費が残り、次年度使用額が生じた。 ただ、サンプリング実施予定地点に大きな変更はなく、次年度以降も、新型コロナウイルスの感染拡大に留意しながら、サンプリングを実施したいと考えており、そのための旅費として使用する計画である。
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