2020 Fiscal Year Research-status Report
RNAポリメラーゼIIのDNA二本鎖切断修復機構への関与の解明
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20K19968
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
磯野 真由 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (90713511)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RNAポリメラーゼ / ユビキチン化 / DNA二本鎖切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写領域におけるRNAポリメラーゼ (Pol II)の停滞やRNA:DNAハイブリッド構造の蓄積はゲノムの不安定性を誘発し、発がんや難治性神経変性疾患につながることを示唆する報告がある。ゲノムの不安定化はDNA損傷応答・修復機構に障害があると誘発される。また、Pol IIが内因性のDNA二本鎖切断 (DSB)の誘発に寄与することは示されている。しかしながら、転写領域のDSB修復の分子機構の詳細は明らかにされていない。Pol IIのDSB修復経路への関与と役割について明らかにすることによって、上記で示すような病態解明の一助になると考えている。 令和2年度は、カンプトテシンによってDSBが誘発されている状況下で、Pol II抗体による免疫沈降法 (IP)を用いたウェスタンブロットを行い、DSB修復関連タンパクの抗体を用いたスクリーニングから、いくつかのタンパクがPol IIと相互作用することを確認した。また、転写共役型修復時に見られるPol IIのユビキチン化が今回の状況でも生じるのか、Pol II抗体によるIPを用いたウェスタンブロットを行い、Pol IIのバンドシフトを指標に検討した。カンプトテシン処理によってPol IIのバンドシフトが検出され、ユビキチン化が生じている可能性が示唆された。さらに、Pol IIのユビキチン化修飾サイトが不活化した数種の変異体細胞株と野生株を用いて、上記の方法でカンプトテシン処理に伴うPol IIのユビキチン化の有無を検討した。現時点では、カンプトテシン処理特異的なPol IIのユビキチン化サイトは同定できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
DSBの誘発については、制限酵素の発現誘導によって細胞内の任意の部位にDSBを誘発させるシステムを組み込んだ細胞株の樹立を当初試みたが、ベクター作成が難航したため、カンプトテシン処理を用いた。免疫沈降法を用いたスクリーニングの結果からPol IIと数種類のDSB修復関連因子との相互作用があることを確認できたのは大きな進歩である。しかしながら、通年を通したコロナ禍が続く中、緊急事態宣言の発出もあり、感染症対策上のシフト勤務や解析装置を使用する際のメーカーやメンバーとの円滑な連携が進まない事も有り、思うような研究を進める事が出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA損傷に伴い、Pol IIと相互作用が見られたDSB修復関連タンパクがPol IIやPol IIのユビキチン化に対してどのように寄与するのか、標的タンパクのノックアウトまたはノックダウンを行い、免疫沈降法(IP)を用いて検討する。さらに、修復への寄与についても免疫蛍光染色法等を用いて検討する。Pol IIのユビキチン化修飾部位の同定については、変異体細胞株を用いたIPを引き続き進めていく。
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Causes of Carryover |
通年を通したコロナ禍が続く中、緊急事態宣言の発出もあり、感染症対策上のシフト勤務並びに解析装置を使用する際のメーカーやメンバーとの円滑な連携が進まなかった。上記影響から、使用予定であった装置を使う機会が延期となり、試薬等の購入が見送られたため、今年度以降使用する予定である。
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