2020 Fiscal Year Research-status Report
下水道と放流先河川における発癌性微量有機副生成物とそれらの前駆物質の解析
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20K19973
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
趙 博 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (30868427)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ニトロサミン / 前駆物質 / ノンポイント汚染源 / 路面排水 / 下水処理場 / 下水 / 簡易処理放流 / 河川 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水質保全対策等において面的に分布し特定汚染源として捉えにくい非特定汚染源負荷の解析を目的に、琵琶湖南湖流域の雨天時に、周辺路面排水と河川でのN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)とN-ニトロソモルホリン(NMOR)、それらの前駆物質ジメチルホルムアミド(DMF)とモルフォリン(MOR)の時間および空間分布と変動の把握、実下水処理場での各処理工程での濃度変動の把握を目的に調査を実施し、以下の結論を得た。 1.調査対象地域では、雨天時に路面排水を介したNDMA、NMORおよび前駆物質(DMFとMOR)の負荷が大きいこと、また、連続サンプリングの結果、降雨初期の路面排水中の対象物質の濃度が大きいことに起因していることを把握した。 2.交通量が多い地域においては、雨天時に南湖周辺河川からのNDMA、NMORおよび前駆物質(DMFとMOR)の流出量が比較的高くなること、また、調査対象地域での最大河川(野洲川)における降雨時5日間の連続調査より、晴天時に比べて降雨後にDMFとNMORの河川水中濃度があがり、DMFとNMORが路面排水を経由して野洲川に流出している可能性を示した。 3.下水処理場内での調査より、晴天時に比べ降雨後にNDMAとNMORおよび前駆物質(DMFとMOR)の一次処理水中の濃度が上昇することから、雨天時に対象物質のノンポイント汚染源(例えば路面排水)があることを確認した。簡易処理が発生した時間帯には、対象物質の流出負荷量が、簡易処理が発生なかった時間帯より数倍高くなることを実測し、簡易処理により放流水中の濃度が増加するだけでなく、水域への負荷量も増加していたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1. N-ニトロソモルホリン(NMOR)の前駆体モルフォリン(MOR)について、複数種の環境試料水中の検出方法が確立された。 2. 研究対象物質のN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)とN-ニトロソモルホリン(NMOR)および前駆物質ジメチルホルムアミド(DMF)とモルフォリン(MOR)について、晴天時の点源汚染と雨天時の面源汚染の両方について比較・評価された。 3.路面排水はNDMAとNMORおよび前駆物質のノンポイント汚染源あることが確認された。 4.淀川水系の上流域である琵琶湖南湖流域における雨天時に周辺路面排水と河川でのNDMA、NMORおよび前駆物質の時間的・空間的な存在実態、実下水処理場での各処理工程での連続調査による濃度変動の把握が日本国内で初めて実測された。
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Strategy for Future Research Activity |
1.京都市内の下水道と放流先河川において、N-ニトロソアミン類とその前駆物質を監視する。 2.河川流下過程での挙動を把握するため、下水処理水の割合が高い河川にて調査を同時に行い、環境中での存在時間が長い発癌性微量有機副生成物とその前駆物質の流下挙動を把握する。 3.琵琶湖南湖流域と淀川流域における発癌性微量有機副生成物とその前駆物質の汚染実態、季節変動、経年変化を把握する。
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Research Products
(2 results)