2021 Fiscal Year Research-status Report
イルカのコンタクトコールを用いた受動的音響観測システムの確立
Project/Area Number |
20K19976
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
三島 由夏 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (90854761)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イルカ / コンタクトコール / 音声発達 / 指向性 / コミュニケーション / 鳴音 / 受動的音響観測 / 生物音響 |
Outline of Annual Research Achievements |
受動的音響観測に用いるカマイルカのパルスシークエンスの機能に関する知見を広げるため、引き続き新潟市水族館マリンピア日本海においてカマイルカの鳴音収録・行動観察を行った。2020年度の研究結果から、仔イルカは母イルカと同じタイプのパルスシークエンスを出すようになることが分かってきたが、その獲得経緯についてはまだよく分かっていない。2021年度は2019-2021年に出産があった母イルカの鳴音行動について重点的に調べた。産前1か月前から徐々に母イルカのパルスシークエンスの頻度が上昇し、産前数日間は特に高頻度であった。一方で、産後のパルスシークエンスの頻度は、数時間は高いままであるが、その後すぐに減少し、それ以降も母イルカは1か月以上の間パルシークエンスを出すことはほとんどなかった。今後は仔イルカの鳴音の発達過程についても定量的な解析を行い、母イルカや他個体の鳴音行動とどのように関係しているのかについて総合的に明らかにしていく予定である。 また、受動的音響観測を行う上で、受信範囲がどのくらいなのかを推定する必要がある。そこで2020年度に引き続き、伊豆・三津シーパラダイスにおいて、パルスシークエンスの指向性や送波音圧の測定を行った。現在成果についてまとめている。 さらに、受動的音響観測を行うためには、膨大な録音データからカマイルカのパルスシークエンスを検出する方法を確立する必要がある。そこで、2016-2019年の5-6月にカマイルカが来遊する青森県陸奥湾で収録した録音データを用いて、鳴音の自動検出方法を検討した。録音データをケプストラム画像へと変換し、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、カマイルカのコンタクトコールであるパルスシークエンスの有無について画像分類を行った。その結果、90%以上の精度を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カマイルカのパルスシークエンスのタイプにどのような機能があるかについては、飼育下の母子に焦点を当てて解析してきた。そして2021年度にも出産があったことから、サンプル数を増やすことができた。母子がパルスシークエンスを共有している可能性が明らかになってきたことに加え、産前産後における母イルカのパルスシークエンスの出し方についても分かってきた。指向性・送波音圧測定に関する実験は予定通り行うことができ、現在成果をまとめている段階である。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、野外で新たに長期録音を行うことができなかったが、カマイルカに関しては過去のデータを用いることで、パルスシークエンスの自動検出手法を構築することができた。しかし、過去の野外のデータ量は少なく、パルスシークエンスのタイプ分けについては進んでいない状況であること、また、ミナミハンドウイルカのデータも得られていないことから、やや遅れていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目は引き続き新潟市水族館マリンピア日本海においてカマイルカの鳴音収録・行動観察を行い、パルスシークエンスの機能について総合的に考察する。また指向性・送波音圧についての成果を学術論文としてまとめる。さらに、野外で長期的なデータを収集し、構築した自動検出手法を使ってカマイルカのパルスシークエンスを検出し、まずは人間の目視でタイプ分けを行い、その後自動化についても検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、実施できない調査あったため。次年度の調査へ使用する。
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