2020 Fiscal Year Research-status Report
海洋汚染物質のノンターゲットスクリーニングと生物濃縮機構の解明
Project/Area Number |
20K19984
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
後藤 哲智 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特定研究員 (90825689)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ノンターゲットスクリーニング / GCxGC-HRToFMS / 生物濃縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、海洋食物網を構成する低次-高次栄養段階生物を対象に、海洋汚染物質のノンターゲット/ターゲットスクリーニング分析を遂行することで、複合曝露レベルや組成プロファイルの種差、そして生物濃縮機構の解明を試みる。令和2年度は、愛媛県で採取した魚類の試料抽出液をゲル浸透クロマトグラフィー (GPC) とシリカゲルカラムクロマトグラフィーで処理し、精製溶液を二次元ガスクロマトグラフ-高分解能飛行時間型質量分析計 (GCxGC-HRToFMS) 及びガスクロマトグラフ-高分解能二重収束型質量分析計 (GC-HRMS) で測定・解析した。スクリーニング分析の結果、魚類試料から多様な有機ハロゲン化合物 (OHCs) が検出・同定され、なかでも残留性有機汚染物質 (POPs) に指定されているポリ塩化ビフェニル (PCBs) や有機塩素系農薬類 (OCPs) による相当濃度の曝露が現在も継続していることが明らかとなった。 魚類に蓄積していたOHCs (人工汚染物質、海洋天然物質、構造・起源未知物質) の環境レベルと曝露経路を把握するため、愛媛県の同一地点で採取した海水、堆積物、そして二枚貝試料を上述の前処理法に従い抽出・精製・分画し、各試料の最終溶液をGC-HRMS分析に供試した。その結果、全媒体から既知・未知OHCsの検出が認められ、これら一連の物質群は沿岸環境中に遍在していることが示唆された。このため魚類は、生息環境や餌生物を介して未知物質を含む多様なOHCsに慢性曝露されているものと推察される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、GCxGC-HRToFMS及びGC-HRMSを駆使して海洋汚染物質のノンターゲット/ターゲットスクリーニング分析を遂行し、海水、堆積物、二枚貝、そして魚類のモニタリングデータを包括的に収集した。また各媒体から検出が認められたOHCsについては、物質・異性体別に生物濃縮係数を算出するなど、魚類に対する曝露リスク評価にも着手した。当初の計画通りに研究が進展しているため、現在までの進捗状況は概ね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、愛媛大学の生物環境試料バンク (es-BANK) に冷凍保存されている魚食性鳥類の生体組織試料をスクリーニング分析に供試し、海洋生態系の高次捕食者に蓄積するOHCsの総体と特性を把握する。また、集積した一連の研究データを統合的に解析することで、食物連鎖を介したOHCsの生物濃縮機構を解明する。
|
Causes of Carryover |
今年度はコロナ禍の影響により、参加予定であった国内・国際学会がともに中止となったため、旅費で計上していた予算を使用できなかった。また、その他に計上していた予算については、分析機器類の修理・メンテナンス費として主に計上していたが、機器に大きなトラブルや故障が見受けられなかったことから差額が生じた。以上が、次年度使用額が生じた理由である。 当予算は、研究計画調書にも記述している通り、分析機器類の維持・管理・メンテナンス費に充てる予定である。
|