2020 Fiscal Year Research-status Report
水素資化性N2O還元細菌のガス透過膜による戦略的集積培養・獲得と利用に向けた検討
Project/Area Number |
20K19988
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
末永 俊和 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80828377)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 亜酸化窒素 / 水素 / 集積培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
独立栄養的な環境において蓄積する亜酸化窒素(N2O)に対する削減技術の開発に向けて、水素を電子供与体としてN2Oを削減可能な細菌群の探索が有効であると考えた。本研究では水素資化性N2O還元細菌の戦略的集積培養、生理学的特定の評価を行うことを目標としている。 本年度は、嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)と共存する細菌群にこのような活性を持つ細菌群が居るのではないかとおいう仮説を立て、N2Oと水素を添加したバイアル試験にてN2O消費活性を調査した。今回の実験では、水素を添加した系としていない系でN2Oの消費活性に違いが見られなかった。また、水素の方がN2Oよりも早く消費する現象が確認された。このことより、Anammoxバイオマスでは、水素は必ずしもN2Oの電子供与体として働かず、他の反応(例えば残存する硝酸や亜硝酸の還元)に使用された可能性が示唆された。よって今後の集積培養の必要性が示唆された。 水素資化性N2O還元細菌の集積培養に向けて、培養装置を新たに組み立てた。本装置は中空糸ガス透過膜に水素を供給し、それを利用できる細菌群を微生物膜として培養することができるものである。これを用いて2年目以降、集積内容を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで殆ど明らかにされていない、独立栄養的なN2O還元細菌の一端を掴むため今年度は培養実験を行った。 嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)と共存する細菌群にこのような活性を持つ細菌群が居るのではないかとおいう仮説を立て、N2Oと水素を添加したバイアル試験にてN2O消費活性を調査した。今回の実験では、水素を添加した系としていない系でN2Oの消費活性に違いが見られなかった。また、水素の方がN2Oよりも早く消費する現象が確認された。このことより、Anammoxバイオマスでは、水素は必ずしもN2Oの電子供与体として働かず、他の反応(例えば残存する硝酸や亜硝酸の還元)に使用された可能性が示唆された。水素を添加した系で水素の消費は見られたので、水素を何らかの電子供与体として利用していることは分かった。一方で、それがN2Oの消費を促進する結果とはならなかった。これは当初の考えに反するものであったが、これから行う水素とN2Oを添加する集積培養の意義がより明確になったと考える。また、これらの集積培養装置を作製した。2年目においてこれらの運転を開始する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は水素とN2Oを添加してこれらを利用する微生物群の集積培養を中心に研究を展開する。同時に、難水溶性ガスである水素をガス透過膜により添加するメリットを明確にするため、透過効率等の評価を行う予定である。また、集積培養が達成された際には微生物群集構造解析を行い、どのような細菌群が集積されるのか解明する予定である。 今年度から所属が変わり、実験設備や研究環境が変化した。できるだけ早く実験環境を整え、本課題の遂行に支障がでないように進める予定である。
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